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ネット時代の宿と客の関係は 群馬県旅館組合・歴代青年部長が語る(1)

群馬県旅館ホテル生活衛生同業組合(福田朋英理事長)は先ごろ、組合創立50周年を記念して主に歴代青年部長をメンバーに座談会を行った。インターネット時代の旅館ホテルと客の関係が話題となった部分を抜粋して紹介する。出席者=福田朋英さん(座長、伊香保温泉・福一)、千木良芳明さん(前橋市・ちぎらホテル)、鈴木俊夫さん(水上温泉・風花の宿寶ホテル)、大塚隆平さん(伊香保温泉・景風流の宿かのうや)、持谷明宏さん(猿ヶ京温泉・猿ヶ京ホテル)、田村明義さん(四万温泉・清流館豊島屋)

クレーム書き込みの反面、コミュニケーション増大

千木良 インターネットの出現で、我々の商売の形が非常に大きく変わりました。なかでも、お客さんとホテルの関係が変わりました。零細のホテルでもネットのお陰で全国に情報を発信できるのはいいことです。ただ、マイナス面もあります。最大のものは、お客さんにネット上にクレームを書かれてしまうことです。そのことで、私たちがお客さんを見る見方が変わったと感じます。

しかし、そのことでよかったこともあります。お客さんに向き合う心掛けがよくなりました。極端に言えば、ビジネスホテルは鍵を渡せば済んでいた時代がありました。今はそうではありません。ビジネスホテルでも、お客さんとこれほどにコミュニケーションが取れるようになったんだと実感しています。

ネットという両刃の剣がいい方にでればメリットを受けますし、逆であれば辛い思いをします。これが将来どうなるかです。

実は、ビジネス利用ではないお客さんがたくさん泊まるようになっています。夫婦や家族、女性グループなど、観光目的のお客さんが今はビジネスホテルにも泊まります。このときに役立つのが、かつて皆さんと一緒に勉強したことです。異質のもの、価値観の違うものが、今役立っていると実感しています。今、青年部でお世話になっている都市部の若い人もたくさんいると思います。彼らもこうしたことを経験してほしいと思います。

持谷 ネット予約では口コミの力が大きくなっています。お客さんを大切にしなきゃいけないとか、お客さんの評価を上げなきゃいけないということに、皆さん非常に努力しています。そのための勉強会もしています。

実はネット予約やメーリングリストが盛んになってきたのは僕が部長をしていたころで、湯原温泉(岡山県)の古林さんたちが中心になり全旅連青年部のメーリングリストを立ち上げて、そこでコミュニケーションを始めました。

それが今は、ウェブ2.0などと呼ばれるようなコミュニケーションツールの進化もあって大きく変わってきていると思います。今は常に自分の旅館が実況中継されているような感じです。

福田 実態とは違っていてもブログや口コミなどで評価が高ければ、選ばれる可能性があります。これがエスカレートしていくとなにが起こるのか。口コミ情報を見て聞いて旅館を選んだ人は、その旅館について、どう満足するのか。ウェブ2.0で流れている以上の実態サービスが必要ということで、評価が増えれば増えるほど負担も増えますし、一層、人材が大事になってきているということでしょうか。

サービスと"媚"は違う

田村 ちょうど採用に悩んでいるところです。やはり日本人の人種が変わってきているというのか、日本人のありようが変わっていると感じます。昔の日本人であれば謙虚さであったり親切心であったり、礼節を重んじるということは属性のようなものでしたが、今はそうしたことに当てはまらない若い人が増えています。旅館業で言えば、朝のあいさつや「ごめんなさい」という謝罪の言葉とか、今までは、そうしたことが当たり前にできて、その上でおもてなしや作法を学んでいくというものでした。今は「当たり前」がすでに違っているので、そこから始めなきゃいけない難しさがあります。

お客さんも同じです。おもてなしを提供する側と受ける側双方にマナーがあって、気持ちよく泊まっていただく、泊めてもらうという感覚がずれてきている気はします。このあたりをどう埋めていくかが旅館業の仕事なのかとも思っています。私たちはサービスを売って生業(なりわい)にしていますが、それをはき違えて媚(こび)を売って生業にしている旅館があるんじゃないかと思うんです。サービスと媚はまったく違うと思っています。料金をいただいているお客さんであっても、間違っていることはきちんと伝えることもサービスなんじゃないかと思います。そこを業界としても認識し実行していくことが、ウェブ2.0のマイナス面に対する救済策になると思います。

群馬県旅館組合歴代青年部長座談会

インターネット時代の旅館ホテルに
ついて歴代青年部長らが意見交換

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