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復興にビジネスモデル必要 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(1)

国際観光旅館連盟(国観連)は2011年度総会で、日本観光旅館連盟と統合し、12年4月に新しい宿泊団体を設立することを決めた。佐藤義正・国観連会長(岩手県盛岡市つなぎ温泉・南部湯守の宿大観)に、東日本大震災後の東北観光の現状と、統合に向けた作業の進捗状況などついて聞いた。2回に分けて掲載する。

課題は福島原発の収束 運転資金の融資制度を

―東日本大震災の影響から伺います。

佐藤 岩手県の沿岸部には旅館組合に加盟しているだけで90軒ほどの宿泊施設がありますが、7割ほどが津波の被害を受けています。町全体のインフラが壊れたので営業がまだできていないところもあります。

しかし、津波による被害が限定的だった宿泊施設は営業を再開し、復興作業員などの宿泊を受け入れているところもあります。再建が不可能と思われていた中規模以上の施設でも、営業の継続を求める社員の声を受け、再建を目指し始動した旅館も数軒あります。

一例では、異なる市町村に立地する数軒の宿泊施設と、旅館に食材を納入している業者も加わりグループでの再生を目指しています。そうしたグループを支援する仕組みが国にできたので立ち上がったのです。岩手の観光復興に希望を与えてくれる取り組みです。

―つなぎ温泉も含めた内陸部の状況はいかがですか。

佐藤 盛岡市は、沿岸部からは200キロメートルほどに位置します。私のところでも地震の影響で建物に被害がありましたが、営業に支障はありませんでした。しかし、震災から2日間は電気も電話も不通で、電話が復旧すると、今度はすべて宿泊予約のキャンセルです。そのときはさすがに将来を悲観しました。

ただ、私のところでは、その後、警察関係者や瓦礫撤去の作業員、仮設住宅の建設作業員と順を追って宿泊依頼があり、3月21日に営業を再開してから長期滞在を中心に一定の客室稼働率を保つことができました。7月20日前後でそうした需要が終わり、夏休みは一般の旅行者もずいぶん回復しています。このエリアとしてはおおむね昨年の7―8割程度の入り込みだと思います。

―今、旅館に必要な支援はなんでしょう。

佐藤 福島原発の収束が一番の課題です。現在は、西日本からの旅行者がほとんどありませんし、インバウンドは皆無です。岩手の観光にとって福島を中心とした問題が一番大きいのです。海外から日本を見た場合、日本中がそのように思われているかもしれません。

こうした状況で営業を継続し雇用を守るために、東京電力には速やかに賠償金を支払っていただきたい。金融面の支援も必要です。特に運転資金は使いやすい制度がありません。震災による間接被害、二次被害についての融資制度がありますが、製造業を対象にしたものです。震災により利用者が激減しているのを間接被害と認め、宿泊業も使える制度に改めていただきたい。

―観光復興にはなにが必要ですか。

佐藤 震災で国内旅行は大きなダメージを受けていますが、国内旅行の低迷は今に始まったことではありません。バブル後の失われた20年のなかで、旅行者も宿泊施設も減り続けてきた事実があります。新しいビジネスモデルを構築し、新しい需要を開拓しなければ将来は見えてこないのではないのでしょうか。

国観連・佐藤会長

国内旅行の将来は新しい需要を
開拓できるか否かと佐藤会長

(トラベルニュースat 11年8月25日号)

復興にビジネスモデル必要 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(2)に続く

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