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バリアフリーへ補助金利用を 東京観光財団・セミナー

「障害は人にあるのではなく、社会や環境が作り出すもの」と、世界観の逆転を納得させる一方で、現実は「私が車いすで越えられない段差は4―5センチ」「車いす利用者が新しい場所に行くとき、勇気とリサーチが必要。きちんとした情報が車いす利用者の外出を後押しする」と、車いす利用者の日常を紹介する。

NPO法人遠位型ミオパチー患者会代表で車いす利用者の織田友里子さんは、東京観光財団(TCVB)が6月26日に、東京・お台場のホテルグランパシフィック・ル・ダイバで開いた「宿泊施設バリアフリー化支援補助金説明会&支援セミナー」で基調講演し、「みんなの力で世界をよくしたい」と、バリアフリー環境の進展に向け、宿泊業界にも関心と協力を求めた。

遠位型ミオパチーは、心臓より遠い筋肉から侵されていく進行性の筋疾患で、20―30歳代で発症し、歩行困難から始まり、やがては寝たきりになるとされる難病。織田さんは大学生時代に診断され、当日の講演も車いすで行った。国内には約400人の患者がいるが、今のところ治療法はないという。織田さんは同病への理解を深めてもらおうとNPO法人を立ち上げただけでなく、バリアフリー動画情報サイト「車椅子ウォーカー」の代表も務める。

「ネットで調べるけど、車いす利用者に必要なきちんとした情報がない。動画だと具体的にバリアフリー状況を把握でき、疑似体験にもなる」と動画情報のメリットを強調する。

東京観光財団セミナー

「みんなの力で世界をよくしたい」と
織田さんが講演

実際、車椅子ウォーカーでは、織田さんが車椅子で飛行機に搭乗する様子や、クルーズ船旅行、みかん狩り、回転ずし、ホテルでの宿泊体験などを映像で紹介している。車椅子ウォーカーのサイトには、TCVBの公式ウェブサイトからもアクセスできる。

「ホテルがウェブサイトできちんとバリアフリー情報を公開することで、ホテルにとっても問い合わせの負担を軽減できます。現場での表示も大切です。例えば『お手伝いが必要な方は声をかけてください』と表示があれば、必要なときに車いす利用者がスタッフに声をかけやすくなります」

上手な情報の提供は、どちらか一方に負担を強いることではなく、施設と利用者双方の負担軽減にもつながる。

東京都には床面積1千平方メートル以上のホテル旅館にバリアフリー化の整備を義務付ける「建築物バリアフリー条例」があるが、施設の改装を伴う必要のない「備品でもカバーできることは多い」と織田さん。

「スロープ1本からでも、バリアフリーは始まります」と、東京都のバリアフリー化支援補助金の活用をホテル旅館に促していた。

セミナー2部ではメディアプランナーで元じゃらんムック編集長の鈴木聡子さんが「バリアフリー旅行のマーケットの現在」をテーマに講演し、車いす利用者には「点ではなく、移動を線で結んだ情報が必要。目的地までや、観光地内での基本移動経路のバリアフリー化や情報が求められている」などと指摘した。

また、車いす利用者には常に利用する人と、必要に応じて利用する人がいることを説明しながら「ターゲットを明確にすることが大事。必ずしも車いす利用者を対象とするのではなく、足腰が不安の人と考えればマーケットは大きい」と話し、バリアフリー化によるビジネスチャンス創出の可能性を紹介した。

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