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"合理的な配慮"義務に 東京観光財団、障害者差別解消法のセミナー開く

16/08/16

東京観光財団はこのほど、東京・大手町のフクラシア東京ステーションで、今年4月に施行された「障害者差別解消法」をテーマにしたセミナーを開き、併せて宿泊施設バリアフリー化支援補助金相談会を行った。障害者差別解消法は、学校や職場、公共交通機関などで、障害だけを理由にした不当な対応や、不当な権利侵害を禁止するもの。行政機関は、障壁を取り除くための「合理的な配慮」をすることが義務付けられる。民間事業は努力義務としてスタートするが、3年後には義務化される。

合理的配慮とは、例えば飲食店や宿泊施設なら、障害の状態を考慮したサービスの「変更や調整」などを指す。知的障害者対応で説明書きにルビを振ったり、写真を多用した分かりやすいメニューを提供したり、段差のある入口にスロープを設置することなどが当たる。

自らが車椅子利用者で、ユニバーサルデザインの普及や啓発、ツアーの企画や引率など取り組むミライロで講師などを務める岸田ひろ実さんは、「合理的な配慮」のために「適切な理解と行動」を身に着けることを求めた。

例えば、健常者がどのように障害者に声をかけていいか分からないときのユニバーサルマナーの1つとして、「お手伝いできることはありますかと声をかけてください。これは健常者と障害者をつなぐ魔法の言葉です。お願いしたいことを素直に伝えられます」と提案した。

また「ハードのバリアフリーだけでなく、ハートのバリアフリーが求められています。ハードは変えづらいけど、ハートは変えられる」などと、「合理的な配慮」の実行に背中を押した。

セミナーでは旅館の現場でバリアフリーに取り組む住庄ほてる(東京・日本橋)の角田隆社長も講演。角田さんは「バリアフリーというより、汎用性の高さを意識して設備や備品を整えています」と話した。

シングルベッドは和室で使用する場合の低床から、通常の高さまで高さを変えられるものを使っている。大浴場の棚は車椅子利用者の手が届くように奥行を浅くしている。玄関入口にインターフォンを設置し、希望に報じてスロープを設置する。食事処のテーブルも椅子や車椅子で利用する場合は高く、床座で利用する場合は低くできる汎用性の高い家具を使っている。

こうした「合理的な配慮」の積み重ねはスタッフの自信にもつながる。

「工夫して施設を整えると、自分たちも安心でき自信がもてます」

また、「口コミもあり、幅広い客層を取れていると思います」と話す角田さん。「障害者の方には介護者の同行も多く、宿で食事を取る傾向があります。客単価も上がり、リピート率も高く、費用対効果は取れています」。

汎用性に置き換えたバリアフリーへの取り組みは稼働率アップや収益の向上にもつながっている。

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