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日本遺産「出雲國たたら風土記」-島根県安来・雲南・奥出雲 連綿と続く地域の営み

たたら製鉄と地域の風土のストーリー

島根県安来市、奥出雲町、雲南市が共同で文化庁に申請していた「出雲國たたら風土記 鉄づくり千年が生んだ物語」が2016年4月25日、日本遺産に認定された。いにしえの製鉄技術が今再び脚光を浴びているのは、この地域で今もなお、たたらが育んだ固有の文化が連綿と続いているからにほかならない。景観、食、暮らし…現代の私たちがこの地域を訪れて、見て、食べて、体験するものごとと、たたらとの関わりを知れば、安来市と奥出雲町、雲南市の旅はぐっと深く味わい深いものになる。

たたら製鉄

「たたら製鉄」の炎は今も舞い上がり続ける。
(日刀保たたら。写真はイメージで通常見学などはできない)

たたら製鉄は1400年前以上から続く、日本古来の製鉄技術。その技術には自然環境や文化、人々の暮らしなど多くのものが関わり成り立ってきた。現在は、奥出雲町の日刀保たたらで世界唯一の、たたらの炎が燃え続けているだけだが、2市1町には地域の営みとして「たたら文化」が息づく。

この地域の特産品の一つ「仁多米」。田んぼの畔もきれいに刈り込まれた美しい棚田で作られる全国的なブランド米だ。この棚田、もともとは山の斜面に水を流して削り砂鉄を得た鉄穴(かんな)流しの名残で、言ってみれば山を切り崩した破壊の現場。映画「もののけ姫」では、自然を壊し山の神々の怒りを買うのだが、ここでは棚田として後世の財産として残し、砂鉄を採取するための水路も農業用水として利用、人と自然が共存する場として再生されている。

出雲國たたら風土記

山を切り崩し砂鉄を採った跡地は
美しい棚田として再生されている

鉄の集積地だった港町の安来では、人々が交流する拠点となり、各地で伝承されていた民謡の影響を受け、どじょう掬いで知られる「安来節」が生まれた。

こうして長年に渡り紡がれてきた2市1町の物語。地元の人たちが誇る「自然と人間の共生、農鉱一体となった産業の構造が、この地域の品格と品性を生んだその価値」をこの地域を訪れた多くの人に感じていただきたい。

出雲國たたら風土記

今年4月の日本遺産認定で、雲南市の
菅谷たたら山内でくす玉を割る3市町の首長

「たたら」とは

たたらとは、古事記や日本書紀にもその名が記載されている古来より続く日本の製鉄技術。粘土で築いた炉に砂鉄と木炭を交互に入れる。ふいごで風を送り木炭を1400度以上の高温に燃焼させることで、自然界では酸化鉄として存在している砂鉄を還元して鉄を生産していく。3昼夜かけて行われる1回の操業に必要な木炭は12トン、砂鉄は10トン。そうして約2.5トンの鉧(けら)ができ、さらには日本刀などに使われる高品質の玉鋼(たまはがね)が採れる。

たたら製鉄は中国地方一帯で盛んで、島根県東部では約1400年前から行われてきた。奥出雲地域は、良質な砂鉄と木炭を得るための森林が広大であったため、鎌倉時代の前後には各地から製鉄技術者が集まり、江戸後期には日本屈指の生産地となった。明治時代に西洋から生産性の高い製鉄技術が伝わると衰退、大正末期にたたら製鉄は終焉を迎えた。

文化庁認定 日本遺産

地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」に認定するとともに、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信することにより、地域の活性化を図ることを目的とした制度。

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