コラム「象の指環」
09年3月10日号
3月5日から定額給付金の支給が始まった。観光業界でも給付金を利用して旅行で出かけてもらおうという企画が活発化している▼滋賀県のおごと温泉では給付金の支給が決まった昨年秋から宿泊プランをつくり、支給日を待った。日が決まって即、マスコミにニュースリリースを流し情報発信を行ったところ、数多くのマスコミからの取材が殺到したそうだ。これからどれくらいプランを使った宿泊客が増えるのかはわからないが、先手必勝であるには違いない。二番煎じの情報にマスコミは飛びつかない▼宿泊客が減った、ツアーに客が集まらない、団体需要がなくなった。だから業績が悪化して赤字になった、と嘆いても何も変わらない。おごと温泉をみていると、時代の流れを的確につかみ、即行動に移すことに長けているように思える▼すべてが成功しているというわけではないだろう。しかし常に環境の変化を念頭においての取り組みに学ぶべきことは多い。(坊)
(トラベルニュースat 09年3月10日号)
09年2月25日号
国内旅行活性化のホワイトナイトはどこにいるのか。観光庁は先ごろ、観光立国推進のためのアクションプランをまとめ、そのなかで日本人の宿泊旅行を増やすには、成長分野となりそうな客層を設定して、重点的に取り組むことが必要だと書き、大学生、小学生の子どもを抱える家族、団塊世代の3つのカテゴリーをあげている▼まずまず見慣れたメンバーだけど、ここに公務員と公務員OBも加えてほしい。国家公務員、地方公務員併せ、全国の現役公務員の数は約360万人。核家族だとしても720万人の塊ということになる▼不祥事を起こしたり、夕張市でもない限り、まず失業はない。年金制度も一般会社員と異なり、退職後の不安も少ない。消えた年金問題とも無縁だった▼自らが公務員ということで書きづらかったとも思うけど、裏アクションプランでいいから取り組んでほしい。職場旅行の奨励でもいい。日本を救うため、公務員は旅に出ようと。(あ)
(トラベルニュースat 09年2月25日号)
09年2月10日号
5、6室しかない小さい宿に泊まった。外観は鉄筋コンクリートで風情もないが、館内は清掃が行き届いていて、飾りつけなどで心安らぐ演出を施してある▼客室はこたつが配され、我が家にいるような雰囲気が心地よく、昔の旅館はどこもこういった雰囲気で、文人や映画人が多くの作品を残せたのも、この安堵感に触れることができたからかもしれない▼朝食後、部屋に戻ると「お帰りまでのひとときに」のメッセージとともにジャスミン茶が用意されていた。施設は古くても「こぎれいで心配り」に勝るサービスはない。(坊)
(トラベルニュースat 09年2月10日号)
09年1月25日号
観光庁アドバイザリー・ボードができた。「観光庁政策検討委員会」なんていう名称じゃないことも、きっと観光には重要なのだろうと思う▼目玉の人選は、元サッカー日本代表で現在は旅人の中田英寿さん。お陰でスポーツ紙をはじめ、観光庁発足の日に負けないくらい多くのメディアが取材に来ていた▼本保・観光庁長官があいさつし、その正面に中田さんと商船三井相談役の生田さん。初代観光庁長官を占った本紙の放談で、候補として名前をあげた3人だ▼さて、彼ら長官と元本紙長官候補が、第1回目の会議で意見を交わしたのは、年間宿泊4泊など5大目標を柱とする観光立国推進基本計画のアクションプランについて。主に2010年を目標年とする5大目標の多くがピンチを迎えるなか、ゴールにつながるスルーパスは放たれるのか▼このゲームには誰もが参加できる。年初に当たって12番目のプレイヤーの1人として、仕事外宿泊旅行年間12泊と放言しておく。(あ)
(トラベルニュースat 09年1月25日号)
09年1月1日号
昨年1月1日号のトップ記事は「08年は国内旅行が来る」とやった。はずした。7月10日号では「インバウンド1千万人は順調」との見出し。これまた、はずしそう▼性懲りもなく「09年は美味しい旅が来る」と打った。イソップ童話のオオカミ少年のような気分だけど、旅行に行くから美味しいものを食べるのではなくて、美味しいものを食べるため旅行へ出掛けるというのに、説得力を感じた▼高い金を払ったから美味しいものが食べられるわけではない。誰とどこで食べたとかが美味しいの要因だったりする。中道さんも講演で「美味しい、美味しくないは客が決めることだ」と言っていた▼これまではずしまくっていたのは、目に見えるような見えないようなマーケットが主体だった。美味しい旅は個人の価値観に根ざす。そこが少し違う▼何だか根拠が乏しいが、明るくなる話題で元気が出そうな09年の紙面にしたい。どうぞ、オオカミ中年と思わないでください。(T)
(トラベルニュースat 09年1月1日号)
08年12月10日号
先日、ある料理コンテストを取材した。これまで幾度かこういったコンテストの取材に行ったが、いずれも工夫を凝らした料理がテーブルに並べられ、見学者の関心をひいていた▼しかし今回の場合は料理を作った本人がほとんど表彰式に顔を出さず、白けた雰囲気になったばかりか、料理を審査する人の中から「我々はプロの料理人ですから、料理の盛り付けを見るだけで、どのような味付けになっているのかわかるのです」という発言があったのには少々驚いた▼盛り付けだけで料理の良し悪しがわかる料理人もすごいと思う。しかし、そんなすごい料理人が集まっているこの地区の料理の評価はどうなのか、という疑問も湧く。仮に料理人が盛り付けだけで料理の中味がわかったにしても、今回のような発言はしない方がいいのではないか。驕り高ぶりといったように映って損である▼何事も謙虚な姿勢が一番であることを改めて感じた料理人のコンテストだった。(坊)
(トラベルニュースat 08年12月10日号)
08年11月25日号
ある大学で「里山」をテーマにしたシンポジウムを聴講した。昔の里山は人と近かった云々...という話をしていた大学教授が、突然、子どもの教育論を始めた▼曰く、里山で遊んでいる子どもたちは生き生きとしている、人や生き物にやさしくなり思いやりのある子になる、自立心がありたくましく育つなどなど。確かに、そうなんだろう。でも、その里山の効能をいくら聞かされても頷けなかった▼違和感はすぐにわかった。その教授が続けて、里山がなくなり、テレビゲームとかで遊ぶから、子どもの心が荒んでしまったのだ、と▼この人は、里山を特効薬のように思っているらしい。ある子にはいいかもしれないが、子どもだっていろんなタイプの子がいることを忘れたのか、無視しているのかな▼観光を切り口にした観光立国教育が小学校で広がりつつあり、来年5月には全国集会もあるそうだ。短絡的な成果を求めず、観光を好きになる子どもが増えれば嬉しい。(T)
(トラベルニュースat 08年11月25日号)
08年11月10日号
あるコンサルタントから旅館がもっと伸びていくためには、従業員を使用人という経営者の意識を変えないといけないのではないか、という話を聞いた▼ここでは法的な意味ではなく、通常の慣例の表現と捉えていただくとして、使用人という響きには、どこか見下げたところがある。経営者の言うことにタテをつかず、言われたとおりに動けという実態がまだまだ多いのを嘆いて、このコンサルタントは従業員を「使用人」として見るな、と言われたのだろう▼確かに元気な旅館は、情緒的な言い方になるが、経営者と使用人という関係ではなく、経営者と従業員として前向きに旅館経営に取り組んでおられるように思う。経営者自身も従業員が積極的に仕事に向かう教育に力を入れているし、諸々の会合でそういった従業員と顔を合わせても輝いている▼その輝きは経営者への信頼と自施設への自信に満ちた光彩のような気がする。(坊)
(トラベルニュースat 08年11月10日号)
08年10月25日号
観光庁の発足を記念したシンポジウムが各地で開かれている。10月20日に大阪であったシンポジウムは、本保芳明長官が「就任してから初めて」という講演をした▼本保長官は観光庁発足後、新たに目標に据えた「訪日外国人観光客2千万人」を中心に話した。「お宿のお客さんの6人に1人が外国人になります。99・1%が内需で成り立っていた旅行市場の国際化が進むことになり、ある意味で日本の観光の構造改革が求められているのです」と、2千万人時代が到来した時の変化を強調していた▼すでに日常的に外国語が飛び交っている大阪・ミナミやサッカーW杯の開催時を思い起こした。業界だけではなくて、日本人そのものの意識改革が試されるんだろうなと想像した▼一方で、同じく観光庁発足の目玉施策「観光圏整備事業」。各地の整備計画を散見したが、数年先の数値目標は旧態然とした総入り込み客数が主だった。何か新しい「ものさし」はないんだろうか。(T)
(トラベルニュースat 08年10月25日号)
08年10月10日号
このひと月、誰が初代観光庁長官かで、賑やかだった。本紙でも、初代長官人事を東西記者で放談し、盛り上げに一役買えたのではないか。放談で、一番最初に名前をあげた本保さんに決まり、放談もまったくのでたらめじゃなかった▼結果として長官人事に華はないかもしれないけど、文句もない。ただ、難航する長官人事関連の報道では気になることがある。民間からの登用がうまくいかない理由として、待遇面の格差ということがしきりにあげられていた点だ▼長官が常勤であり国会質疑があることが負担というのは分かる。ただ、同時に観光日本をリードする素晴らしいポストでもある。本当に報酬が原因で打診を断った人がいたのだろうか。検証なしで記事にしているとすれば失礼な話だ▼長官の報酬が民間と比べて、記事にするほど低すぎるとは思わない。それよりなにより、日本の観光に手弁当でも取り組む情熱のある民間人だって何人かは思い浮かぶ。(あ)
(トラベルニュースat 08年10月10日号)




