コラム「象の指環」
08年8月25日号
映画好きの入口となった「小さな恋のメロディ」に墓地でデートするシーンがある。墓石を見ながらメロディがダニエルに話しかける。「見て、亡くなった日が1週間しか違わない。本当に愛し合っていたのね。私たちにできるかしら」「大丈夫。僕たちはもう1週間も好き合ってる」。こんな会話だった▼連れ合いの祖父と祖母が7、8月に相次いで亡くなった。6年ほど前に脳梗塞で倒れた祖母の介護を、祖父は自分でやりたがった。祖父は自分が肺がんで入院し、亡くなる3日前まで介護を続けた。祖母はそれから3週間ほどで亡くなった▼祖父は戦争で中国大陸に取られ、終戦後、岐阜に入植した。外地で夫が戦死した祖母と知り合い、1男1女をもうけ2男2女を育てた。連れ合いの母は、祖母と前夫の長女にあたる▼なんだろう。市井の人にこそ偉い人がいると思う▼「俺が死んでからどのくらい生きる」。連れ合いは「20年くらいじゃない」と言う。(あ)
(トラベルニュースat 08年8月25日号)
08年7月10日号
最も美しい洞爺湖を見たいならザ・ウィンザーホテル洞爺からの眺めがお勧めだ。そこからならザ・ウィンザーホテル洞爺が目に入らないから▼こういうジョークは流行っていないのか。13世紀のお城じゃあるまいし1990年代に、こんな場所に、こんなものを建ててと、それは別にしても、なにもここで環境問題を議論しなくてもと思った首脳はいなかったのだろうか。城だけに確かに警備しやすそうだが▼何年も前、ニセコで東山プリンスホテル新館に泊まったとき、どうしてこんな場所に、こんな建物がと、恥ずかしかった。自然環境のいい場所に施設を作る旅館業は、そのことだけである種の罪も背負う▼それでも、「施設からの景色」だけじゃなくて、気持ちよく「施設を眺めてもらう」ためのセンスや工夫はある。前回のサミットのザ・ブセナテラスに、そうした恥ずかしさを感じなかったように▼それでも事務所の居候は、ウィンザーに泊まりたいと言っているけど。(あ)
(トラベルニュースat 08年7月10日号)
08年6月25日号
6月18日、今年初めての真夏日となった山形県上山市で、第86回全旅連全国大会が開かれた。会場の外では芋煮や串コンニャクが振る舞われ、会場内では、実をつけた鉢植えのサクランボ300鉢が参加者にプレゼントされていた▼14日、岩手・宮城内陸地震が起きた。旅館の被災もあった。東北の広い範囲で新幹線が止まり、高速道路も安全確認のため通行止めになった▼震災後の常ながら、被災の有無に関係なく、岩手、宮城の広い範囲で宿泊予約のキャンセルがある。わずか4日後に、同じ東北で開かれる全国大会への影響を心配した▼実際には、大会には過去最大規模の1200人が参加した。47都道府県すべてが参加したのも初めてだという。大会を通じて、お見舞いの言葉もたくさん聞かれたけど、ステージの花笠音頭や懇親会もみんなで楽しんだ。岩手、宮城の旅館経営者も大勢が参加し、全国からの同業者を歓迎する心意気を見せた。いい全国大会になったと思う。(あ)
(トラベルニュースat 08年6月25日号)
08年5月25日号
京都で取材をした帰り道に火をつけようとすると、三条通の歩道に例のマークが大きく描いてあった。通勤ルートだった御堂筋は去年秋から路上禁煙だ。その直後、何人かが千円の過料を支払うのを難癖つけたり、走って逃げた。駐禁と同じで「大阪らしいのぅ」とは笑えなかった▼「ストレス解消や」とうそぶいてきた。そこら中が例のマークだらけの都内なんて、まさに敵国に乗り込むようなもんだと思っていた。無駄遣いと言われても「お金には換えがたいこと」と、のたまわってきた▼去年の夏、ある旅館のロビーに灰皿が置いてあったので、堂々と吹かしていた。家族連れがロビーに来たから慌てて消した▼やめる気はない。でも、周りの人が迷惑に思い、他人の健康を害することは知っているつもり▼群馬県・伊香保温泉のホテル木暮に「あぁ、こんなところで戯れたい」と思うようなシガーラウンジがある。ストレス解消に行きたい、と思う喫煙者もいたりする。(T)
(トラベルニュースat 08年5月25日号)
08年5月10日号
「仕事の対極は休みじゃなくて遊びらしいですよ」。東京総局のIT担当の居候兼記者は「よいゴールデンウイークを」と午後6時少し過ぎに事務所を出た▼香港から来ている友人と、これから宿泊先のペニンシュラ東京で待ち合わせて食事に行く。明日は天気がよければ都心をサイクリング、明後日から軽井沢のセカンドハウスに滞在して薪割り▼ひと月ほど前、アウトドアウェアのパタゴニアのメールマガジンに「広報担当者2名とも、2週間の休暇のため、暫く対応できません」とあった。日本の会社だったら交代で休むんだろうけど、さすがにパタゴニア。目指すは社長不在の経営管理、社員をサーフィンに行かせようという会社▼この間知り合った、サンフランシスコから来日した中国系アメリカ人。勤続30周年のリフレッシュ休暇で日本にやってきた。休暇の長さは、有給で8カ月。クール▼やっぱり問題は、観光業界に働く人がどれだけ旅行してるかだよな。(あ)
(トラベルニュースat 08年5月10日号)





