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旅館業界面前の課題 全旅連全国大会記念対談(3)

―旅館ホテルの建物に関わる固定資産評価の平成27年の見直しが決まりました。

佐藤 経年減点補正率を現行の50年からどこまで短縮できるかが見直しのポイントです。評価の見直しで仮に現行の50年が40年に短縮されれば旅館業界全体で年間60億円の負担が減る計算になります。国の重点施策として観光立国推進を掲げながら、現行は税率の高さが観光の受け皿である旅館ホテルの足を引っ張っています。バブル後から現在に至るまで、旅館ホテルは売上が減少するなか、いろんなコスト削減を図ることで経営を持続してきました。しかし、売上に占める固定資産税の割合は増える一方です。現状に即した固定資産税にしてほしいというのが我々の要望です。50年前の建物というと東京オリンピックのときの建物です。そうしたものにまで課税するのが適正なのかどうかということです。

大木 観光立国を推進するなかで旅館ホテルが外客を受け入れるときに、それに合わせた設備の改良、設備投資が必要です。経済環境が厳しいなかで、固定資産税の高止まりが新しい投資への足かせになっている部分があります。観光立国推進の観点からも固定資産税を減額し、設備投資ができる環境を整備していただきたい。

―全旅連はNHK受信料問題、固定資産の評価見直し、被災者の受け入れなど、古い問題、新しい問題で結果を出しています。従来とは違う点があるんでしょうか。

大木 観光が地域経済のなかで認められ始めたということだと思います。都道府県理事長が各県で首長に頼りにされ始めています。知事や市長と政策的な話をする機会も増えています。観光庁ができたことが大きいですね。国に観光業界の声が届きやすくなっていますし、観光を後押ししてくれるサポーターが増え、いろんな組織の支援も得られるようになってきました。

佐藤 例えばこの1年の間に小沢(一郎)さんと2回、輿石(東)さんと2回、直接お会いして陳情しています。観光や旅館ホテルへの関心が強くなっていることの表れだと思います。そうしたなか、あらゆる問題で多くの関係官庁や国会議員、閣僚に粘り強く、何十回でも足を運んでお願いしてきました。1つ1つの問題について時間をかけ根気強く行動し続けることが大切だと思います。

外税表示の実現へ全力 佐藤会長

―消費税の外税表示化を求める運動がはじまりました。

佐藤 旅館業界にとって消費税問題は、古くは料飲税の廃止運動から始まって長い期間取り組んできた問題です。平成元年に消費税が導入されましたが料飲税は特別地方消費税として残ってしまいました。当時、私は青年部員ですが親会とともに特消税撤廃運動に取り組みました。ようやく平成9年に特消税の廃止を勝ち取り消費税一本になりました。そして創設時に外税表示だった消費税が総額表示になったのが平成16年です。総額表示の問題点は、販売価格に消費税が内税として飲み込まれてしまうことです。旅館業界の特殊性もありますが、お客さまは1万円とか1万5千円とか切りのいい宿泊料金を求めます。消費税が10%に増税された場合、今まで宿泊料金1万円のなかに消費税5%分が入っていたものが、今度は倍の10%分を旅館が自腹で払わなければならなくなる。旅館の利益は5%もない現状では、消費税が10%に上がれば旅館は立ち行きません。もちろん消費税分については今でもお客様に別でお支払をお願いしますと言えます。しかし、外税表示が義務化されていれば、さらに明確にお客様に伝えることを徹底できます。外税表示への転換はたいへんな努力が必要だと思いますが、川内博史会長を中心とする民主党観光振興議員連盟にも力を借りてなんとか実現させたい。外税表示や固定資産税については、あまり関心がないという方もいらっしゃいますが、これらは制度として決めていただくと、その後、ずっとその権利を得られるということです。結果としてたいへんな利益につながることをご理解いただき、運動に参加していただきたいと思っています。

大木 クレジットカードの手数料やエージェントの手数料も消費税額も含んだ総額に対してかかってしまうのも問題点です。デフレのなか消費税をインクルーズして販売している旅館にとっては、外税を徹底するだけで大きな利益につながるということも言えます。消費者に訴求するために1万円を切った総額9800円で販売している宿泊プランを、消費税が値上がりしたからと、その分を上乗せできる経済環境にはありません。その点、外税表示なら、宿泊料金と税金がはっきりします。

全旅連全国大会記念対談

佐藤会長(左)と大木会長代行

青年部の知見に期待 大木代行

―お2人とも青年部長経験者です。青年部にはどのような期待をしていますか。

佐藤 青年部は、がむしゃらにやるのがすばらしいところです。青年部は親会とは別の組織だと思っていますから、青年部の活動に関与しません。 しかし、消費税の外税化など業界全体の問題に対して青年部の行動力を期待しています。

大木 今、青年部は成熟期を迎えています。選挙で青年部長が決まるのも成熟の証左だと思います。特に期待しているのはネットエージェントの対応です。昨年度まではネットエージェントとは、佐藤会長と私と総務担当の工藤(哲夫)さんの3人で折衝してきました。トップ同士で話すので結論を出すまでにスピードがあるのがメリットでした。しかし、インターネット予約サイトによる問題は今後、色々な問題点が多く出てくると思います。そこで今年度からはインターネット協議会を総務委員会に置き、この協議会に青年部に入ってもらいました。青年部の知見と交渉力に期待しています。

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