雨も悪くない 伊豆・松崎町の吟行ツアーに参加
2月22日の日曜の朝、新宿から東名道の沼津ICまではスムーズで1時間半くらいだっただろうか。ここからがいけない。下道はいきなり渋滞で、国道1号線から136号線、有料道路の伊豆中央道に入っても渋滞は続き、昼食場所に指定されていた修善寺の少し先の食堂まで、沼津から1時間半ほどかかった。
渋滞は修善寺温泉あたりが一番ひどくて、たぶんあのあたりは有料道より一般道の方が空いていた。200円を2回払い、しかも時間もかかるんじゃ。都内では気の利いた幹線道なら、目的地まで首都高20分、一般道30分などと時間の目安が表示されていることがある。渋滞は仕方ないにして、このくらいの心配りならすぐにでもできるだろうに。東海岸も中伊豆も相変わらず伊豆の道路は不親切で、やはり週末は伊豆には近寄りたくないと思ってしまう。
昼食をとり、国道136号線を土肥方面に分かれると渋滞は一気に解消され、気分も軽い。ここから土肥、堂ヶ島を抜けて松崎町までは40分ほどだった。
松崎町へは、松崎町商工会が企画した「吟行句会モニターツアー」で出かけた。月1回、東京の高田馬場で開かれている知り合いの句会に参加させてもらうようになって2年。仕事ながら初めての吟行だった。
松崎町商工会では俳句によるまちおこしと観光アピールに取り組んでいて、昨年、第1回「花と浪漫の里俳句大会」を行ったそうだ。選者は大串章さん、黒田杏子さん、小澤實さんの3人で、俳句の世界では有名だそうだけど、3人とも知らない。3月最終土曜日には松崎町に3人が集まり、表彰式も行うそうだ。最優秀賞5句にはペア無料宿泊券が贈呈される。
句会モニターツアーに戻ろう。参加者は11人。皆さん、いずれかの句会に参加していた。この日は嘱目(しょくもく)といって、その日に見たものを題材に、午後の句会までに5つの句をつくることになった。
俳句で悪いことを詠もうとは思わない。だから、まちのいいところ探しに、俳句はぴったりじゃないだろうか。
句会の月曜日、松崎は雨が降ったりやんだりだった。半日、松崎のいいところを探し続けた。
「伊豆の長八美術館」に行った。「鏝で伊豆長が日本一」と讃えられた松崎出身の左官、入江長八の鏝(こて)絵が数多く展示してある。漆喰彫刻、漆喰芸術とも称される。「どうぞ鏝絵の繊細さを確かめてください」という具合に、受付の係員に虫眼鏡を渡された。海の絵では、船上で点のように見える人々が、虫眼鏡越しに活き活きと浮かび上がった。
名人の鏝絵に浮かぶ春の海
選句では、絵画や写真のなかの春は季語にならないと指摘されたが。

「伊豆の長八美術館」には
長八の鏝絵が数多く展示されている
創建1301年という臨済宗のお寺、帰一寺。三門の脇に夏蜜柑がたくさん落ちていた。三門越しに雨に石段が見えた。庭の梅の古木は花の盛りを過ぎていた。池のカエルが鳴いた。なにか俳句がつくれないだろうか。考えながら本堂の縁側に座り、大屋根の軒から落ちる雨を眺めた。軒下には水溜りができていた。
軒下に横一列の春の雨

雨の帰一寺
松崎町は「なまこ壁」のまちとしても知られる。方形の瓦をひし形の向きに置き、目地は漆喰を盛り上げて埋める。丸く盛り上がった漆喰がナマコに似ていることから、なまこ壁。それほど多くが残っているわけではないけど、ときどきは目にした。今は保存の機運も高まっているそうだし、橋の新しい欄干をなまこ壁風にデザインするなど、なまこ壁を意識したまちづくりも見られた。
昼食会場に向かう車は、小さな橋を渡ると海にぶつかった。
なまこ壁角を曲がれば春の海
実際には車は曲がらずに海に突き当たったけど。
港のそばの食堂で昼飯を食べた。予約制で、その日、定置網を揚げられれば海鮮丼になり、定置網を揚げられなければ漬け丼になる。その日は船が出て海鮮丼だった。ごはんは刺身ですっかり隠れていた。女将さんが9種類の魚が乗っていると、いちいち説明してくれた。イナダとかサワラがあったような気がするけど、食べながらでよく覚えていない。
店の名前も覚えていない。とにかくすぐ前は港だから、探してみてはいかがだろう。1100円で、ずいぶんうまくて安いと思った。
春の海を一網打尽の海鮮丼

この写真を撮った背中に食堂がある
日経を捨て、「季寄せ」(季語をまとめた本)を持って旅にでよう。
(阿部政利)
(09/03/03)
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