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上海万博は雨でも"熱い"! 中国の高揚感を体験

10/07/01

今年の目玉イベントのひとつ2010年上海万国博覧会に行ってきた。取材した日はあいにくの雨だったが、5月1日の開幕から最高の36万人の人出で賑わった。この夏、海外旅行商戦をけん引するであろう上海万博をレポートする。

人気パビリオンは長蛇の列

取材と言っても特別なプレス対応ではなく、一般入場者に混じって会場内を見て回った。結論から言うと、なかなかハードだった。世界でも例外的な経済発展を続ける高揚感だろうか。雨の中の行列をものともしない中国人の推進力は抗しがたく、日本の閉塞感をそのまま持ってきてしまった身にはこたえた。

上海万博会場は東京ドーム約70個分、328ヘクタールもある。黄浦江を挟んで、世界各国のパビリオンが並ぶ浦東会場と、企業館や都市の展示館が集積する浦西会場で構成される。両会場館はフェリーで結ばれている。

浦西会場の1号ゲートから入場した。開門30分前の8時30分には、すでにかなりの人数が並んでいる。1列で並ぶよう柵が設けられ混乱はないが、後ろに並ぶ中国の人が妙に身体を密着してくるのに辟易した。もっとも開門直前を避ければ、余裕で入場できるらしい。現地ガイドが後で教えてくれた。

入場に際しては、空港の搭乗ゲートと同様な安全検査がある。ペットボトル、ライターなどは持ち込めない。もっとも会場には売店が多数あり、喫煙コーナーにはライターが置いてあるので愛煙家にも問題はない。

入場ゲート周辺にはパビリオンの事前予約機が設置されている。中国館や日本館など人気パビリオンは、ここで入場を予約しておく。それでも人気館はあっという間に予約できなくなってしまうらしい。これも後でガイドに聞いた。

会場内では、詳細なマップを無料で配布しているし、案内板も多い。いずれも中国語と英語表記だけだが、迷う心配はまずない。白をベースにした統一ユニホームを着たボランティアスタッフも多数いて案内してくれる。トイレは清潔で数多くあった。休憩ベンチもあちらこちらに点在している。このあたりは万博史上最大の7千万人を迎え入れる準備が整っていると言えるだろう。

上海万博中国館

中国館を奥にカラフルな傘が並ぶ

開門直後にも関わらず浦西会場の「日本産業館」はすでに2時間待ち。早々にあきらめ、フェリーでメーンの浦東会場へ移ることにする。

同じように考えた人が多かったのだろう。フェリー乗り場は黒山の人だかりだった。フェリーはおよそ20―30分間隔でピストン輸送している。だから慌てなくてもよさそうなものだが、少しでも前へという人が多い。船の乗員数を確認するためだろう、太もものところでレバーが回転するゲートがあった。これが意外に怖い。後ろから押されるので、つまずきそうになるからだ。それでもなんとか乗船し、デッキに出る。晴れていればいい景色だったろうと想像する。

浦東会場では最初に、欧米とアフリカ各国のパビリオンがあるCゾーンに行く。特異なデザインのイギリス館はじめイタリア、フランス館はいずれも長蛇の列。仕方なく会場内を行き来する無料シャトルバスで、アジア諸国が集まるAゾーンに移動する。こっちの方がさらに人が多い。ためしに日本館を覗くと6時間待ちの表示が出ていた。

このままでは何もパビリオンに入れずに終わってしまうかもしれないと思いつつ、北朝鮮館に行く。実は、入場前からチェックしていたパビリオンだった。近くて遠い隣国に接する数少ない機会だ。多少並んでも、ぜひ見学しようと意を決した。その意気込みに反して、ほとんど並ぶことなく入館。行列ができない理由は、10分足らずで出てきてしまったことから推測してほしい。隣のイラン館もスッと入り、スッと出られた。

パビリオンは思ったように見学できなかったけれど、会場内を縦横に走る「高架歩道」とメーンストリートになる「世博軸」がなかなかいい。会場を見下ろし、万博の雰囲気が味わえる。屋根付きで雨の心配もない。

そのほか、会場内にはレストランも多数あり、日本でお馴染みの牛丼チェーン店もあった。各国パビリオンには、お国の料理を食べさせるレストランを併設しているところも多い。ただ、昼食時はいずれもかなり混雑していた。

会場へのアクセスは地下鉄または万博タクシーが便利。特に、地下鉄13号線は万博のために開業した新路線で、入場券を持っている人だけが利用できる。上海市街地の人気スポット、新天地に近い馬当路駅から乗れる。13号線には乗っていないが、上海の地下鉄車内は清潔で快適だった。

約6400万人が来場した大阪万博には1、2回行ったのだが、幼かったためほとんど記憶は残っていない。当時を詳しく知る人に聞くと、いかに画期的な博覧会だったかを熱く語ってくれる。

それを上回る7千万人の目標来場者数を掲げ、史上最大規模で開催している上海万博。中国高度成長のシンボルイベントとして末代まで語り継がれることになるのだろうか。いずれにせよ、あの"熱さ"は、もう日本で味わえないことは確かだろう。電車を整列して待てなかった20年ほど前の大阪みたいなイケイケの空気が流れていたのだった。

上海万博は10月31日まで。株式会社全旅や大手旅行各社が日本地区公式旅行代理店としてチケットを取り扱っている。

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