楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

"海の秘境 山の秘境"で連携を にし阿波、四万十・足摺観光圏で座談会(2)

―次に、これからの10年について、どのような取り組みをされていかれるのでしょうか。

食や文化、体験で"対決型"の見せ場を提案

谷口 10年前、大歩危・祖谷いってみる会ができて、地域の旅館が仲良くして知恵を出し合うと、様々な場面でニュースとして取り上げてもらえることを知りました。また行政との連携で、活動に幅ができました。我々の会ができるまで、大歩危・祖谷というエリアは、大歩危峡やかずら橋に観光に来た人が泊まるところでした。温泉郷として認識いただくことで目的地となり、「お美姫鍋」といった地元の食を開発したり、インターネットで共通のプランを出したりできるようになり、あらためて"連携"の重要性を実感しています。

その意味で足摺やオール四国との連携は非常に大事で、連携を強化する体制づくりが必要だと思います。

山本 個人型に移行しようといっても地域全体で取り組まないと実現は無理でしょう。そういう転換期に観光圏の認定を受け、この事業にうまく乗ることで個人客対応のできる温泉地への移行を図りたいと思っています。

個人客対応となると「人に優しい観光地」というイメージも必要なので、足摺展望台をバリアフリー化する計画も進めています。インバウンドについても行政とともに腰をすえて取り組んでいますが、ジョン万次郎出生の地でもあるわけですから、ジョン万次郎をうまく活用して欧米からの誘客を狙いたいですね。

―2つの観光圏の現状を聞かれて溝渕さんは、どのようにお感じになりましたか。

溝渕 先般、香港で大歩危・祖谷と四万十・足摺を「海の秘境 山の秘境」としてPRしてきましたが、非常に好評でした。インバウンドや個人客を誘致するにはお題目が必要で「海の秘境 山の秘境」というキャッチコピーは、新しい切り口でいいと思っています。

―両観光圏とも民間と行政の連携がうまくいっている好例だと思いますが、行政サイドのご意見は。

桧尾 大歩危・祖谷地域は元々、通過型の観光地として栄えてきました。行政側としては、それも観光だと思っていましたが、ここ数年は地域に滞在してもらい、その地の歴史や文化、生活する人の生き方を知っていただくことが観光だと捉えています。

妖怪屋敷や襖からくりといった取り組みも、そういった観点から始めたものです。大歩危・祖谷はこういった素材が数多く残っているので、前面に出していきたいと思っています。

酒井 土佐清水市の観光はジョン万次郎を観光資源とする誘客促進、広域観光の推進、やさしい観光地づくりの促進などを進め、本市の基幹産業として位置づけてはいますが、個人客の動きを見ると新たな観光地づくりを行う転換期にきています。

丸岡 2月から観光地域づくりプラットホームを推進する一般社団法人を立ち上げ、着地型旅行商品の造成と販売促進に取り組んでいます。先日も首都圏の旅行会社へ来年のNHK大河ドラマ「平清盛」、落合集落、妖怪屋敷をからめた着地型ツアー商品をPRしてきました。

岡崎 圏域内の2泊3日以上の周遊ルートを構築するため、体験プログラムの開発や人材育成事業を行っています。観光圏としての入り込み客目標は達成していますが、宿泊客数では伸び悩んでいます。

田中 台湾の航空会社が今年の11月に高知、岡山のプログラムチャーターという形で6便運航します。先日も台湾の旅行会社14社に足摺へモニターツアーでお越しいただきましたが高い評価を得ました。一部の旅行会社からは高知、岡山の4泊5日のツアーで、2泊四国周遊型の商品を造ってもいいとの声もいただいています。

日本における旅行商品の滞在型を進める中で、体験型の着地型プログラムは重要で、すでににし阿波観光圏ではそういう商品も造っておられるので、四万十・足摺観光圏でも同様のプログラムを造って対比、対決型の見せ方をすれば面白いのではないでしょうか。

谷本 観光圏で宿泊重点地域にあたる大歩危・祖谷いってみる会とあしずり温泉協議会の連携はいいことですね。すでに話が出ているように「海の秘境 山の秘境」というキャッチコピーもできているようですし、それぞれ開発した商品の情報を共有化して、旅行雑誌などにアプローチをかけてはどうでしょうか。

―この2つの観光圏を結ぶJRさんのご意見は。

榎本 今後必要なのは、地域の顔が見える情報発信で、今回テーマとなっている「秘境」も食や地域ガイド、ボランティアの人たちの顔を出しながらストーリーをつないでいくことが大事でしょう。観光は自然や景色と重ねてしまいがちですが、両地域が支持されるのはシニア層で、その人たちに何回も来てもらうには人と文化の魅力を発信すべきです。

―本日の話し合いの中で「海の秘境 山の秘境」として両地域が連携していくことは共通認識になったと思います。これから誘客活動や共同宣伝など一緒になって進めていけることは多々あることでしょう。そこで、最後のまとめとして両地域が連携を進めるための協議会の設立を提案して、今日の座談会を閉めたいと思います。

購読申し込み
地旅
夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ