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"共存共栄"で築く未来 全旅・池田孝昭社長―OATA・徳原昌株理事長対談

全旅(池田孝昭社長)と協同組合大阪府旅行業協会(OATA、徳原昌株理事長)が「共存共栄」を合言葉に提携関係を強化している。ともに全国旅行業協会会員をメーンにした組織で、着地型旅行企画や地旅などを共同で推進し、中小旅行会社が存続するモデル事業の構築を目指す。池田社長と徳原理事長にこれまでの経緯、今後の展望などについて意見を交わしていただいた。

徳原理事長「地旅商品の造成検討」 池田社長「着地型推進で信頼関係」

―これまでの経緯を教えてください。

池田 全旅協で着地型旅行の必要性を10年前から提唱し始めました。その際、全国の会員が一堂に会し、研究や発表の場が必要だと提案しました。ところが協会主催では当時、なかなかまとまりませんでした。そこでOATAさんを中心として全国28の協同組合、事業会社で「全国旅行業事業連合会」を設立し、2003年に大分県別府市で第1回国内観光活性化フォーラムを開催したのです。ですからOATAさん、そしてOATAを中心としたKTT(近畿東海旅行業連合会)の協力がなければ、このフォーラムはできませんでした。今、着地型旅行が国策として注目を集め、全旅協も推進していますが、そのきっかけはOATAとKTTが賛意を示してくれたことが非常に大きいのです。

徳原 第2回フォーラムは、KTTに参画する協同組合滋賀県旅行業協会が中心になって開催しました。この事業は今や全旅協の一大事業になっていますし、地方の行政に対する我々の認知度も非常に高まりました。

池田 そうです。ですからフォーラムをきっかけに、信頼関係が自然と高まっていきました。それで昨年からは、OATAさんの着地型旅行企画である「天神祭船渡御の貸切船」を私どもでも販売させていただくようになっています。

徳原 私が理事長に就任して早々、全旅と協力してやっていく基本線を打ち出しています。共同の集客事業は今のところ天神祭だけですが、今年度は事業部に、全旅の「地旅」に商品提供ができるまで持っていってほしいと頼んでいます。事業部が今非常にがんばってくれていて、大阪城や道頓堀など定番だけでなく、鶴橋とかコリアンタウンといったあたりの商品化も検討しているようです。大手がすぐできるようなコースではなく、国際市場だったら振興組合がガイドをしてくれるものなど、商品価値をはっきりさせて大阪のお客さんも行ってみたい商品を造りたいですね。

池田 今は皆、着地型商品を造るけれども、ただ造っただけなんです。発地と着地が一緒になって造らなければ販売ができない。発と着が連動したものが、我々の言う地旅であり、商品造成と手配センターを相互にやろうということなのです。そして、ANTA―NET(地旅商品流通販売システム)を使って消費者にも直接販売できるようにする。このままでは中小旅行会社は、大手の代売だけに淘汰されてしまう。だからこそ、大阪の"本物"を提供できるOATAさんには非常に期待しています。

将来は地域拠点で一本化

―今回の提携ではクーポン事業も大きなウエイトを占めていると思いますが。

池田 OATAさんが私どものクーポンに参画いただいて、もう7―8年になりますかね。

徳原 全旅クーポンについては非常にメリットを感じています。OATAの受入契約数で2200ぐらい、全旅は1万6千もあります。いくらOATAといってみても、しょせんはローカル、マイナーです。全旅クーポンによって、組合員の利便性は非常に高まったと思いますね。ただ、我々が進んでいるところもあります。ローカルの強みと言うのでしょうか。例えば、大手旅行会社や航空会社との提携は組合が一括して契約できています。それによって、組合員は保証人や補償金に神経を使わなくていいんです。将来的に全旅でそのような形ができれば、クーポン事業は全旅で一本化するべきだとも思っているんです。今、全旅は東西に拠点を持っていますが、これが地域ブロックごとに拠点を持つと会員にものすごく有利になる。その時に我々協同組合が、その拠点を担うのか、もしくは組織を変えて全旅に合流するのかはともかく、そういう形が将来望ましいでしょう。

池田 今、社団法人の公益法人改革の中で、全旅協の都道府県支部が現状維持できるか、また現在の会員数がどのような状況になるかはたいへん不透明な状況の中、私どもも会員が減り、取扱が減っていき体力が落ちる。それを浮き草のようにただ流れに乗るのではなく、どこかに根を張らないといけない。ですから近い将来、全旅直営の拠点を各地域に設けることを考えなければなりません。この5年で業界は劇的に変わります。まだ、体力があるうちに独立独歩から共存共栄を志向する。そのために私どもも今危機感を持って取り組んでいます。

徳原 共存共栄の内容を詰めていただき、KTT全体で提携する方向へ進めていきたいと考えています。

株式会社全旅=1976年に全旅協内に発足した全旅と全旅協クーポン会が前身。80年代に別法人化し、2002年には全旅協クーポン会連盟と全旅が合併し現在の形になった。クーポン、保険、旅行業が事業の3本柱で、クーポンの08年度取扱実績だけで約214億円を計上している。本社は東京都中央区銀座。大阪市北区に西日本支社を設けている。

協同組合大阪府旅行業協会(OATA)=1976年に発足。100%補償クーポンや組合員ネットワークシステムの導入など先進的な取り組みを行い、旅行事業の協同組合として全国最大規模を誇る。組合員数約130社、年間取扱実績は115億円を超す。事務局は大阪市都島区。

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