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着地型観光を考える 近畿運輸局・商品化実践セミナー

国土交通省近畿運輸局は2月22日、大阪市内のホテルで「着地型旅行商品実践セミナー」を開いた。観光関係者ら約90人が参加した。

集客販売や情報発信学ぶ

セミナーははじめに、観光カリスマの刀根浩志さんが「地域ツーリズム創出のポイント」についてプレゼンテーション。和歌山ほんまもん体験倶楽部の事務局長として、450の体験プログラム開発に関わり、年間28万人が利用するまでに至った経験から話した。

刀根さんは「何のために観光をするのか」という理念と目的を明確にしておかなければ続かないと指摘した。「よく、いろんなところで言われますけれど、観光振興によるまちの活性って何でしょう。具体的に伝えないと誰も付いていけません」と、まずはジャブ。

年商25億円を稼ぐ和歌山県内の農産物直売所では、朝に野菜を持ってくるのも、夕方に売れ残りを持って帰るのも農家が自らする。「ほかは売り切れなのになぜ自分は売れ残っているのか。直接持って帰って、をするとそれがわかる。責任と競争の意識が農家に生じるんです」と刀根さん。「ブランドを日本語訳すると『約束』です。それは媚を売るのではない、誇りを売ることなのです。客と生産者が互いに高まりあうようにしなければ、観光なんて生まれません」と右ストレート。

さらに「モノを売るから技術を売る、目に見えないサービスを『見える化』させるんです」「観光客が喜ぶためではありません、住民が喜ぶ観光交流でなければならない」「体験だけでは金にも、リピーターにもなりません。何を持って帰ってもらうのか」「地域の価値を高める力は、自分の足裏の資源を『見える化』し、人はどうして旅に行くのかを『読める力』が必要なのです」などと連打を繰り出し、参加者をひきつけた。

着地型旅行に取り組む旅行会社の3氏、近畿運輸局企画観光部の平嶋隆司部長が加わったパネルディスカッション。奈良県明日香村、京都府京丹後市、兵庫県・淡路島の着地型旅行の取り組みをベースに意見を交わした。

田舎暮らしや農業体験をメーンにした明日香村の事業に対して、JTB西日本地域交流ビジネス推進室の今井新吾さんは「誰に来てほしいのかターゲットを明確にして、明日香の人たちの生き様をプログラムに入れていくことが大事では」。商品づくりや企画についてアドバイスした。

京丹後ほんまもん体験について、名鉄観光サービス関西仕入センターの野竹鉄蔵さんは「城崎温泉や近隣の宿泊地と連動し、体験プログラムをクローズアップさせるのも有効」などと、集客面での手立てを提案した。

とらふぐを使った鍋料理を開発した淡路島には、近畿日本ツーリスト地域振興事業部の岸本考夫さんが「着地型商品にしやすいのは食文化が一番。食をメーンにいろんな展開も考えられます」などと話した。

平嶋さんは「刀根さんが言っていた、地域の思いを骨材に据えて商品として磨いていくことなのでしょう」と話した。

さらに、着地型旅行を3つの要素から3氏が論じた。

岸本さんは企画造成のポイントを「商材の開発は旅行会社にはできません。その着地の商材へお客様がストレスなくたどり着けるよう2次交通が必要です。そうして旅行会社などと事業者連携をするべきです」。

販売のポイントについて野竹さんは「多くの着地型旅行商品は、どこで、誰に売るのかをセグメントされていないのが現状です」と話し、大阪府堺市を例に挙げ「4年前に市民向けの再発見ツアーから始まり、名古屋など旅行会社と組んで発地の意向を汲み商品をしていきました」などと話した。

情報発信のポイントは、今井さんが解説。「言葉で伝える重要性を強調したいですね。富士宮市の焼きそばがこれだけブレークしたのは、焼きそば学会だとか三者麺談だとか、パブリシティに採り上げられるネタづくりが上手かったからです」と紹介した。

最後に、刀根さんは「孫とおじいちゃんの2人旅とか何でもいい、客だまりを創ることです。いきなり100点を目指すのは無駄。30点でもいいからやってみる。そうすると、来た人が商品を成長させてくれることもあるのですから」。

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