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観光まちづくりを起業する―ものがたり観光の創造 近畿運輸局・セミナー(2)

東日本大震災でも個人の力で拡散した事例がある。「福島ひまわり里親プロジェクト」。ひまわりには土壌中のセシウム除去効果があることから、全国でひまわりを育て、できた種を福島県に送ろうという試み。「福島県への思いを共有」しようとフェイスブックやツイッターで、どんどん広まっていった。

ひまわりPJ、ボランティアツアー

また井門さんは、東京のNPO法人が行っているボランティアツアーも事例として紹介した。ツアーは、岩手県南三陸町と宮城県鳴子温泉を訪れる。南三陸町の漁師は冬になると鳴子温泉へ湯治に通っていた。その関係をベースに、鳴子で栽培されている山間地奨励米を南三陸町で配給する「おむすびボランティア」を組み入れた。宿泊客減に悩む温泉へボランティアとして入って宿泊し、温泉地の産品を被災地へボランティアで運ぶ。東京から来た参加者が間に入ることで、湯治客と湯宿の関係に恒常的な循環の仕組みを作ったと言える。

井門さんは「瓦礫を取り除くだけならもったいない。将来につながる戦略を採ってほしい」。それを井門さんは「物語、ストーリーに編集すること」だと話した。

生活者と地域を結びつける「編集」

井門さんがいう着地型観光とは、(1)単年度の短期効果を目指すな=リピート・口コミで育てていく(2)体験型の押し売りはダメ=生活者の望み・悩みを解決せよ(3)右から左に流す商売もダメ=無から有を生む価値創造―であり「原価ゼロのものに値札をつけて売るのが着地型」とした。

そのために今構築すべきなのは「ナラティブ・ツーリズム(物語観光)」だと指摘。日常的な希望や悩みなど「生活者のものがたり」と「地域資源のものがたり」を結びつける。その結びつける行為が「編集する」意味だという。

編集の具体例として、長野県白馬村のホテル五龍館の宿泊プラン「キャンプデビュー」、北海道洞爺湖温泉で行われているイベント「コスプレ・デビュー」など、やってみたいけど一歩が踏み出せない人を後押しするデビュー企画を挙げた。

「今ならボランティアにデビューしたいっていう人はたくさんいるだろうし、奥様方ではゴルフ・デビューしたいってよく聞きます。だけど、そういう商品が見当たりません。ゴルフ・デビューは2ホール限定5千円でも、すごく集客できますよ」

今後、人口減少が本格化し、観光業界が頼みにする老年人口も横ばいから減少に転じていく。新しい市場の創造が必須な状況だが、井門さんは逆に江戸時代に回帰することを勧める。

氷河期で飢饉など災禍が続いた江戸中期、庶民の間で巡礼が流行った。巡礼者は、旅籠から旅籠を泊まり歩いた。「旅籠の主人が次に泊まる旅籠を勧めていました。客を紹介し、分け合っていたのです」とし、江戸時代から宿のチェーン化があったと紹介。広域的に「長く泊まってもらう工夫を先人たちはしていたのです」。

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