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観光立国推進計画 目標数値の1年後(2)

「1」の訪日外国人旅行者数は最新数値の07年、06年の733万4千人から13・8%・101万3千人あまり増え、834万7千人に達した。

「1」 訪日外客数1千万人は順調

08年に入っても1月の前年同月比15・1%増を筆頭に、各月で史上最高の07年を上回り推移している。このまま順調にいけば、08年に目標としている900万人は確実だろう。

すでに国交省が各界の有識者で設置した「観光に関する懇談会(生田正治座長)」をはじめ、観光関連団体の会合などでは、インバウンド2000万人台という声も挙がっている。小泉純一郎元首相の肝煎りでビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)が03年4月からスタートし、他の数値目標を掲げている事項よりも先行している優位さはあるが、目標数値の上方修正も実現しそうな勢いを感じさせる。

JNTO(日本政府観光局)では「天災やテロなどが起こらなければ、今までと同様に伸びていくのでは」としている。

「2」 逆風下の海外旅行2千万人

一方、深刻なのが海外旅行者数の「2」。06年度の1753万5千人が、07年は逆に1729万5千人に減ってしまった。00年の1781万9千人をピークにして、01年9月11日の米国同時多発テロやイラク戦争、SARSなどの逆風をその都度克服はするものの、次から次へとマイナス要因が表出する。

特に深刻化しているのが、世界的な原油高と需要急増で高騰している燃油サーチャージ、四川大地震や食の安全不信からきた中国の落ち込み。08年1―5月の海外旅行者数では、前年より30万人ほど減少。ある旅行会社の担当者は「海外旅行は逆風の真っ只中」と自嘲気味だ。

燃油サーチャージについては6月30日、国土交通省から「航空会社各社が賦課する燃油サーチャージの旅行取引における取扱いについて」と題した通達が出た。従来、ツアー代金に含まないとしていた燃油サーチャージを今年10月以降、パンフレットなどにツアー代金と併記するよう求めた。表示時点の燃油サーチャージが旅行日に変動した場合でも、そのリスクは旅行会社が負うとし、取消料に関してはツアー代金のみとする、旅行会社にとって厳しい内容。今回の取材では「旅行会社のみリスクを負うのはいかがなものか」という旅行会社の声も聞かれた。

そうした中で、JATAでは今年4月からビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)をスタートさせた。「もっと海外へ!」と発信するロゴマークも作り、10年度もまでに展開する。

VWCでは、過去に市場をけん引して来た若年層の需要を喚起するためタウンミーティングの開催を計画するほか、各国政府観光局や航空会社、旅行会社でバラバラに展開してきたPR活動の統一と戦略化などを行う。「皆で需要を創出する制度を含め環境整備したい」(VWC推進室)。

中国に関しては、四川大地震の復興キャンペーンを北京五輪後にも航空、旅行業界あげて展開する予定で、国も後押しする。国交省幹部は「国交正常化35周年記念事業で昨年訪中客が増加したことを踏まえて、来春の桜の植樹などを実施したい」としている。

海外旅行については「今がボトム」と見る向きが多い。その根拠になっているのは、10年秋の羽田空港拡張や富士山静岡空港の開港(09年春)、茨城空港の開港(10年春)など地方空港の充実を挙げることができる。

羽田空港はすでに、アジア方面のチャーター便が大幅に増えているが、拡張と同時に国際化がさらに本格化しそうだ。拡張で1日あたりの発着回数は300便以上も増え、海外の格安航空会社(LCC)の参入などが見込まれている。

地方空港についても包括旅行旅行チャーター(ITC)の規制緩和を受け、07年から地方発着のパッケージ旅行が増えつつあるが、国交省では今後ITCの撤廃も視野に入れている。日中韓3カ国では、第3国経由を認める自由かも実現しそうな気配が漂う。

海外旅行の担当者間では「今が底で、2010年に海旅ブームが再来する」と期待する声は小さくない。

(トラベルニュースat 08年7月10日号)

観光立国推進計画 目標数値の1年後(3)に続く

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