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若者には旅をさせよ 観光庁、分析結果に危機感(2)

観光庁は昨年の観光白書で、若年層や家族、団塊世代の観光旅行の動向や課題を検証した。今回はこれを新たな視点で分析したもので、なかでも若年層の旅行行動に関する内容は、将来を見据える上でも注目される。

現役大学生の落ち込み顕著 将来市場に影響?

特徴的なのは大学生の旅行回数の低下。観光庁の2008年度の旅行行動に関する実態調査から、若年層の旅行回数をライフステージ別(子ども、学生、結婚前、既婚子なし、既婚子あり)に見ると、現在の社会人は学生時代に年間2―2・5回旅をしていたが、今の大学生では1回強にまで急減している。内訳も約4割が1度も旅行せず、3回以上のヘビーユーザーも1割強と旅行意欲の低さが見てとれる。

観光庁の分析では、その理由を「お金と時間の余裕のなさ」に求めている。現在の社会人の学生時代と今の大学生のお金、時間の余裕さを比較すると、「余裕があまりない」と答えた割合が「お金」は38・2%から47・5%に、時間は7・8%から20・6%にまで増えた。反して、ゲームなどのレジャー要素の影響からか大学生の余暇満足度は高い。地理の知識の欠如を示す結果もあることから、観光庁は「旅行をする動機を持ちにくくなっている可能性」を指摘している。

この結果は大学生に限ったことではない。若年層期間で一番旅行するといわれる結婚前の社会人も、既婚者が結婚前の3回弱から今は2・4回程度に低下。所得減少が響いたと考えられ、結婚後の家族旅行にも影響を与えそうな結果だ。

現在の若年層が40代、50代の中心世代に移行するころには、旅に対する不慣れから「旅行に行かないことが当たり前」、「旅行の存在感の希薄さ」が定着してしまうことが懸念され、旅行の低迷が危惧されるのも自然な流れといえる。

子ども時代の経験と相関

では、どうすればこの予測される危機を回避できるのか。観光庁は、そのカギを子ども時代の旅行経験にみる。

大学生を対象にしたアンケートで、子どものころの旅行経験が役に立っている、大事な思い出であると回答した人ほど現在の旅行回数が多く、反対に良い経験をしていない大学生ほど旅に出ていないことがわかった。子ども時代の旅行回数の多さが良い経験の有無に関わるという相関もあり、子どもの時に数多く旅行すれば、将来的な旅行につながることを示している。このことから、休暇分散による旅行需要拡大の必要性が説得力を帯びてくる。

また、現在の大学生の旅行形態は、社会人の学生時代に比べると、将来への不安から「留学・語学研修」や「知識・教養の向上」が約2倍に増加するなど単なる物見遊山でなく付加価値ある旅を求める傾向がみられた。その意味では昨今の体験型旅行隆盛も理にかなっており、需要の開拓次第では将来的な伸びが期待できるかもしれない。

今回の分析結果は観光立国の実現にも影響を与える内容であり、観光庁は国内観光振興への戦略的な施策づくりに生かしていくとしている。

(トラベルニュースat 10年2月10日号)

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