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"旅行会社魂"を発揮 JTB西日本の交流文化事業(2)

大阪市に隣接し、臨海部には工場が建ち並ぶ兵庫県尼崎市。近隣の西宮市や芦屋市の高級住宅地のイメージとは対照的で、人情に厚い下町の風情は市内外から「あま」と親しく呼ばれている。

地域活性化に支店が動く 兵庫・尼崎と京都・福知山

JTB西日本尼崎支店はあまの中でも特に、あまらしい阪神電車・尼崎駅前にある。JTBのブランドイメージと少しギャップを感じさせる立地。それに加えて、ほかの支店と異なるのは「あまがさき・街のみどころ案内所(あまかん)」という観光案内所が店内にあることだ。尼崎市に委託され2009年10月に開設、運営している。

これまでの尼崎市は観光不毛の地と言っていい。高度成長時代は商工業が盛んで、地方からどんどん人口が流入した。しかし近年、工場の海外流出や人口減の波が尼崎市にも押し寄せた。商店街は閑散とし、市の税収も大きく減少。はっきりと右肩下がりに転じた。

09年度、国のふるさと雇用再生事業に採択されたことをきっかけに、市活性化策として観光に乗り出す。事業の委託先を公募して選んだのが尼崎支店だった。

「交流人口とは何か、というところから始まりました」。打本支店長は、事業をスタートしたころを振り返る。城もない、温泉もない、およそ観光資源と言われるものはないまちだ。「資源にかわるコンテンツづくり」の必要性を市幹部、市民らに説いていった。

あまかんを開設して最初に取り組んだのは、市内案内パンフレットの作成とホームページづくり。3人のスタッフを新たに雇用し「まずは情報発信のツール」を整えた。

2年目以降からは、打本支店長のいうコンテンツづくりに乗り出す。スイーツ、尼崎市ゆかりの漫画「忍たま乱太郎」などに目をつけた。その中で商工会をはじめ地元企業とのネットワークが広がっていった。

ちょうど、そのころ自動車レースの最高峰F1では、尼崎市出身の小林可夢偉選手が大活躍していた。

11月12日、JR新大阪駅構内の団体集合場所に30人ほどが集まった。JTB西日本福知山支店(京都府福知山市)が主催する「大丹波スイーツ&ハーベスト体験ツアー」の参加者だ。

ツアーは、京都府と兵庫県にまたがる丹波地方を「大丹波」としてブランド化する事業の一環。10年度から、京都府の委託で取り組んでいる。丹波の魅力を知ってもらうモニターツアーなのだった。

大丹波ツアーは、幻の小豆「丹波黒さや大納言小豆」を復活栽培している丹波市の農家で収穫体験のほか、大納言小豆や栗など丹波産の食材でスイーツを製造販売する「やながわ」を訪問。福知山市内では、ワールドチョコレートマスターズで優勝した水野直己さんの店「マウンテン」、1本1万円の栗のテリーヌで有名な「足立音衛門」、400年近い歴史を持つ和菓子店「名門堂千原」を巡った。

いずれも、丹波にこだわり、食で丹波を元気にしようとする人たちを訪ねるもので、水野さんはバスにも同乗。丹波で菓子作りを続ける意義を説明していた。京都市から参加した女性は「盛りだくさんの内容で大満足。丹波のスイーツは絶品です」と話していた。

JTB西日本福知山支店の川村泰正支店長は「従来の観光では立ち寄ることのない"本物"との出会いが、このツアーの目的です。今回は、地元の活性化に取り組むNPO法人北近畿みらいと協力し実現しました。我々、旅行会社がいかに地元のネットワークに加わっていけるかがポイントです」。

来年2月には1泊2日のツアーも計画している。川村支店長は「地域コミュニティーと連携し、本物を体験できるツアーを実現したい」。

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