楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

街道観光で復活するインバウンドを地域分散化、関東運輸局×JiFが国際観光立国フォーラム2023を開催

23/11/21

関東運輸局と日本インバウンド連合会(JiF)は11月16日、インバウンド誘客の機運醸成を図る「JiF国際観光立国フォーラム in Tokyo 2023」を東京・六本木のハリウッド大学院で開いた。テーマは「インバウンド大復活!地域分散化戦略と観光DXの未来を考える~街道を活用した観光とともに~」。インバウンド誘客の機運醸成を図るとともに、関東運輸局が推進する「江戸街道プロジェクト」のインバウンドに向けた取り組みを発信し、さらなる街道観光振興の推進を目指す。

特別シンポジウムの様子

特別シンポジウムの様子

フォーラムでは冒頭、ハリウッド大学院大学客員教授でJiFの中村好明理事長が「10月の訪日客が251万人となり、コロナ前を超えた。インバウンドがついに回復したと言える。これからは、ネットなどで情報があふれている中、相手の気持ちに立って考える『パースペクティブ』が求められる。皆さんと共に今後の観光の在り方を考えていきたい」とあいさつした。

中村理事長

中村理事長

来賓からは、観光庁観光地域振興部の中村広樹部長があいさつ。「インバウンドは、1~10月までだとコロナ前の74%程度だが、最終的には2000万人を超えて2500万人前後となる見通しだ。消費額も6兆円まで回復し、1人当たりの消費単価もコロナ前は16万円だったが、円安の効果や久しぶりの日本での滞在であることから平均泊数が増えて21万円ぐらいまで上がってきている」と、インバウンドがコロナ前まで戻ってきたことを強調した。また、3月に新しく発表された観光立国推進基本計画における持続可能な観光というトレンドに乗りながら、消費額向上や地域誘客に取り組んでいく方針を示した。また、「地域と連動しながら、回復傾向にあるインバウンドに関する取り組みを推進し、地域の土地の食べ物や伝統の産品に触れてもらい消費額を増やすことを共に進めていきたい」と呼び掛けた。

中村部長

中村部長

開催地からは、東京都港区の武井雅昭区長があいさつ。「港区は、都内でもホテル・旅館の客室数が一番多いほか、魅力的な飲食店が多くある。歴史的にも国際的な街であり、大使館は全体の半数以上の81カ国も集まっている。また、住民の8%である2万人が住み、外資系企業も多い」と、外国との親和性の高い街であることを紹介。増加するインバウンド誘客に向けては、「サービスの向上に加え、外国人観光客へのおもてなしの土台をさらに築いていく」と述べた。港区では、公共空間での喫煙や風呂屋への入浴、食べ方などを伝えるマナーガイドブックを発行。刊行物は基本4カ国語で作成している。港区の魅力については、「東海道に位置し、品川宿のはじめに位置する。新しい駅である『JR高輪ゲートウェイ駅』のそばにも街道の面影が残っている。このようなものを街道のシンボルとして復活させ、誘客につなげていく」と話した。

武井区長

武井区長

「訪れた外国人に本物を伝える」

フォーラムは、午前の専門部会と午後の総合セッションに分けて開催された。

専門部会の第1セッションでは「ツーリズム&医療・多文化コミュニケーション・地方誘客戦略」、第2セッションでは「地域の魅力発信と観光DX戦略」をテーマに、増加するインバウンドの地域への誘客手法やDXを活用した受け入れ環境整備などが議論された。

総合セッションでは、①街道活用した観光について(足立清和信用金庫・土屋武司理事長〈江尾街道プロジェクトアドバイザリー委員〉)②建築遺産を活用した街おこし計画 千住の大橋眼科プロジェクトの挑戦(JiF東京ブロック・阿部朋孝足立支部長〈阿部養庵堂薬品社長〉)③村や沿線を〝まるごと〟ホテルに見立てる分散型ホテルの事例紹介(さとゆめ・嶋田俊平代表取締役社長)―の3つをテーマにした基調講演が行われた。

このほか、「インバウンド需要の地域分散化戦略~街道観光振興を中心に」「量(訪日客数)から室(真の日本ファンづくりと高付加価値化)への転換」を題に特別シンポジウムを開催。「量(訪日客数)から室(真の日本ファンづくりと高付加価値化)への転換」をテーマにしたシンポジウムでは、江戸街道プロジェクトを推進する関東運輸局観光部の岡村清二部長がインバウンド誘客への心構えとして、「訪れた人に本物を伝えること。日本に来られた方に文化や歴史、伝統を正確に理解してもらう意味でも、本物を伝えなければならない。すでに日本のファンは多く、武道、芸術、食が好きだと言う人はリピータ化になっている」と説いた。

街道観光の推進に向けては、JiFの中村理事長が「街道観光には、自然や食などさまざまなものが詰まっている。京都や大阪にあるような本物は、大都台買った江戸にもある。多様な江戸の文化を掘り越すことが新たな価値や魅力の発見につながる」と語った。岡村部長は「五街道は、徳川幕府ができてから歴史が築かれた。地域の出の取り組みがまだ伝わり切っていない。御宿場印といった取り組みもしているが、回遊してもらえる取り組みと地域と共に連携しながら進めていきたい」と述べた。

岡村部長(右)が街道のさらなる利活用を説いた

岡村部長(右)が街道のさらなる利活用を説いた

 

取材協力 ツーリズムメディアサービス(https://tms-media.jp/posts/16761/

この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
個性全開、輝き増す山陰紀行・島根鳥取西部編

島根県では美肌県を前面に、2023年に高視聴率を記録したテレビドラマ「VIVANT」のロケ...

個性全開、輝き増す山陰紀行・鳥取東部三朝編

「蟹取県」「星取県」に続き、辰年の今年は「とっとリュウ県」―。県の形が龍に見える?ことから...

「光る君へ」稀代の女流作家の足跡求め・滋賀大津

後世に深く濃く語り継がれる名作を描いた女流作家は、混沌とする世の中を、愛を持って駆け抜けた...

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ