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【インタビュー】2つの組織を両輪に100年先の日本を作る|北前船交流拡大機構 浅見茂専務理事

23/10/31
北前船交流拡大機構 浅見茂専務理事

北前船交流拡大機構 浅見茂専務理事

北前船交流拡大機構 日本遺産ブランドを活用し、地位間交流を拡大

北前船交流拡大機構は2017年8月9日、日本のノンフィクション作家である石川好氏による、かつて日本海側が栄えた「北前船寄港地」ルートを点から面へ、回廊として発展させようとする「北前船コリドール構想」に賛同した自治体や企業により立ち上げられた。2007年から16年間、33回にわたり地方と地方の広域連携となる「地域間交流」をテーマに、観光交流プロジェクトを行う「北前船寄港地フォーラム」を母体とし、「北前船ブランドを通じた地域間交流拡大」という理念のもと、JR東日本、JR西日本、JR北海道、日本航空、ANA総合研究所などが中心となり活動している。役員には、元国土交通省事務次官の岩村敬氏(北前船交流拡大機構会長)、元観光庁長官の久保成人氏(同副会長)をはじめ、企業の役員などで構成されている。

北前船交流拡大機構では、北前船ゆかりの土地の観光資源、歴史的遺産の魅力を発信しながら、地方同士の連携を深めている。活動は、現在49自治体で構成され、2017年に日本遺産に認定された「荒波を超えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」としても実を結んでいる。これまでの経験、実績、信用をもとに北前船に限定することなく、広く地域の連携を果たすことを目的に自治体会員制度を発足させて活動が行われている。地域の発展を加速していくため、2022年10月には、フランス・パリフォーラムに合わせ、ルーブル美術館で企業会員制度発起人会を発足している。

北前船交流拡大機構は現在、①国内外を含めた地域間交流の拡大②「日本遺産」ブランドを活用した「北前船」のブラッシュアップ③日本各地にある魅力ある有形・無形の文化遺産の知名度アップ④国内外から各地への観光誘客と交流人口の拡大による地域活性化-の4つの目標達成に向け、戦略性を持った継続的な活動を推進している。

地域連携研究所、北前船交流拡大機構の兄弟分、地方の地域同士のネットワークで地域に活力

地域連携研究所は2021年1月、地域連携を進めるため、北前船交流拡大機構の兄弟法人として設立された。

地域連携研究所では、従来からの「『大都市と地方』の関係で地方振興を図るのではなく、東京に頼らず『地方の地域同士』」が直接つながり、ネットワークを構築し地域の活力を生み出そう」という考えをそのままに、より広域の活動を担っている。

北前船交流拡大機構 浅見茂専務理事 特別インタビュー

北前船を通じて「地域間交流」の促進を図る北前船交流拡大機構と、兄弟分である地域連携研究所の2つの組織。2つの組織は、地域活性化に向けた両輪ととして、どういった未来を描くのか。北前船交流拡大機構の浅見茂専務理事に、取り組みの現状と今後のビジョンを尋ねた。

――北前船寄港地は日本遺産となっているが、その取り組みについて。

日本遺産に認定されている「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」は、全49の市町村で構成されているが、われわれはの取り組みには、北前船寄港地があった自治体だけが参画しているわけではない。日本全国を見渡すと、各自治体にはそれぞれ海や山を有しており、高齢化社会や人口減少を含め多くの共通した課題を抱えている。われわれは、その課題解決や地域活性化に向けて、自治体が連携した取り組みが行える流れ、環境を作っている。連携のモデル地域として、秋田県大館市、岡山県備前市の連携がある。大館市は秋田犬、備前市では備前焼を観光資源の中心に据えて、地域活性化に向けた取り組みを進めているが、地域間交流の一つの形して、イタリア・ミラノで2024年春に開かれる国際家具見本市「ミラノサローネ」に両市が出展する。大館市は曲げわっぱ、備前市が備前焼を中心に地域、観光資源を世界に売り込んでいく予定だ。

――地域連携研究所に参画する市町村は49あるが、どこまで広がるか。

北前船寄港地の日本遺産への登録は2017年4月に認定された。活動の輪は広がり、4年間の歳月を経て48自治体となった。2022年8月には、岡山県備前市からが北前船寄港地であることから追加認定し、現在は49自治体による日本遺産として、認定が継続されている。今後は、3つの自治体の参画も検討している。北前船の寄港地は約300あり、地域間連携の輪を広げていきたい。

――今後の展開について。

ブロック別でのセミナーや検討会なども行いながら、街づくりを応援するプログラムを提示していきたい。経験を積んだ人を仮に上席研究員として地域に派遣するなど、エリア全体の底上げを図っていきたい。

――北前船交流拡大機構と地域連携研究所は互いにどのような役割を果たしていくのか。

北前船がベースにあり、後から地域連携研究所ができた。日本全体に活力を波及するには、われわれは北前船の冠を最大限に生かしながら、活動の幅を今まで以上に広げていく必要がある。2つの組織が両輪として動くことで加速度的に地域間交流が広がることは間違いなく、この波は海外展開にも大きくつながっていく。

――一方で課題はあるか。

われわれは、自然体の中で連携ができるようになってきた。いやらしい異業種交流ではなく、皆が強い思いを持ってつながっている。日本の観光全体にも言えることだが、稼ぐ観光でなければならない。経済が回るきっかけとして北前船の活動があるが、稼ぐ観光を実現するには、自治体だけでなく、多くの民間も巻き込んでいかなければならない。今は動き出しているが、これを促進させることが課題だ。

――日本で観光に携わる人たちに向けて一言。

コロナ禍を経ても、いまだ疲弊をしている日本。経済も頭打ち感が、今後は観光でしか食べられない現状がある。地域創生の原点は、地域の誇りにあり、日本には強い地域愛がある。これを発展させ、誇りを持つことでシビックプライドとなる。われわれの取り組みに参画する人全てがプライドを持っている。北前船の取り組みが発足後、活動域は中国・大連、そして、フランス・パリにまで入った。北前船文化の誇りが世界にまで動き出している。江戸時代中期から明治30年代にかけて北海道と大阪を結ぶ経済動脈として結んだ北前船だが、200年前の先祖からその文化を受け継いでいるわれわれが、100年先の子どもたちにどうつなげるか。シビックプライドを持つ多くの人が集まり、今後の日本の国をどうするかを一緒に考えていこうではありませんか。

取材協力:ツーリズムメディアサービス(https://tms-media.jp/posts/14667/

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