下呂温泉の価値創出 水明館・瀧社長、幻冬舎から著書を上梓/岐阜
岐阜県下呂温泉・水明館の瀧康洋社長が著著「旅行客を惹きつける観光改革―下呂温泉価値創出プロジェクト」(1870円)を幻冬舎から上梓した。20年間にわたって下呂温泉の活性化に取り組んできた活動を1冊にまとめた。10月2日、水明館の取引先などで組織する明会(あきらかかい、説田三郎会長)通常総会で出版記念講演を行った。
団体誘客で地域経済を循環 人手不足、地域経営につながるカイゼン
瀧社長は冒頭「20年前、下呂温泉の旅館が衰退し始めたことをきっかけに地域活性化への取り組みを始めました」とし、2008年に温泉街の飲食店の活性化を目的に始めた「Gグルメ」が転機になったと話した。
「当初は参加店舗が少なかったのですが、新聞社と連携したランキング企画で盛り上がり、翌年には9割の店舗が参加することになりました。新しいことを始めるには、まず誘客。きちんとお金が落ちるようにすることが重要です」。その後も瀧社長は「誘客」を教訓として地域と自館をけん引していったという。
コロナ禍で団体旅行の回復が思わしくなかった時は、大手ではなく、元気な中小旅行会社への営業を強化した。パンフレットを足繁く持参するアナログなセールスを観光協会が主導し実施。「小グループの団体を中小旅行会社が送客してくれました」と、平日稼働を含め下呂全体の客室稼働改善につなげた。

中小旅行会社へのセールス強化を話す瀧社長
中小旅行会社を重視する団体誘客については現在も力を入れる。「人手不足を理由に、旅館業界全体で稼働率を下げて客単価を上げる傾向が広がっていますが、これは地域経済を衰退させる後ろ向きの手法」と批判。団体客の売上によって収益が著しく上下する地域内の酒販店、食事施設などを守り経済循環を維持することが旅館の役目だとも。下呂温泉では今年8月時点で客単価が2千円下落したことから、瀧社長は「団体受入の旅館ホテルリスト」を作成、団体客誘致の再強化に乗り出したと話す。
業界で懸案の人手不足については、著書の中でも詳しく触れているトヨタ生産方式「カイゼン」の導入を勧めた。製造業の手法をサービス業に導入することに抵抗もあったそうだが、社員が知恵を出し合ってグループで無理、無駄、ムラを排除し、コスト削減につながったことを目に見える形でスタッフにフィードバックすることで定着させた。複数カ所で提供していた朝食をカイゼンによって1カ所に集約するなど8年間で3億5千万円のコストを削減。「本来スタッフがやりがいを感じるサービス業務に集中できる環境を整え、賃金にも反映させました」と、社員のモチベーションと生産性の向上につなげた。下呂全体の地域経営にもカイゼンを進め「住民やスタッフが誇りを持ち地域づくり、会社づくりにもつなげたい」とし観光の力で地域活性化をやりきるとした。
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