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【観光業界リーダー年頭所感】公益社団法人日本バス協会 会長 清水一郎 氏

あけましておめでとうございます。

昨年を振り返りますと、3年に及んだ新型コロナウイルスの感染がようやく終息に向かい、人々の動きも活発さを取り戻しました。全国各地で数多くの“4年ぶりの行事”が行われるなど、人々が笑顔で集う光景が戻ってきたことはたいへん喜ばしいことです。

こうした中、バスの需要は回復傾向にはあるものの、いまだコロナ前の水準までには戻っておりません。他方、バス運転者の不足により減便や路線廃止をせざるを得ないような事態が全国各地で発生しております。バス事業は、コロナ禍の3年間で生じた4千億円を超える巨額の赤字が重くのしかかり、燃料価格高騰も長期化して、極めて大きな負担を強いられています。また、今年4月からの働き方改革のための改善基準告示改正の施行で運転者不足問題はさらに深刻化が見込まれ、バス事業は本当に危機的な状況に置かれています。

このような状況を踏まえ、昨年11月8日には前年に続き「バス危機突破 総決起大会」を開催いたしました。全国からバス事業者の方々約250名が集結し、ご出席いただいた約100名の自民党国会議員の先生方へ、バス事業の危機的な状況を訴えて支援を求め、・「地域ブロック平均単価」を「実勢コスト」に・人手不足対策、外国人バス運転者制度の実現・EVバス補助金の大幅増額・キャッシュレス化の加速―の4つの項目について決議を行いました。

1つ目のバス路線の維持に不可欠な赤字補填のための補助金については、その算定方式の見直しが行われ、補助金の拡充が図られることとなりました。このほか運賃改定の手続きも所要の見直し措置を講じていただきました。関係の皆様のご尽力に心より感謝申しあげる次第です。

今後はこれらの措置を活用しつつ運賃改定を実施して待遇改善を進め、バス運転者の雇用環境を改善することにより人手不足対策につなげていきたいと考えております。さらに、現在、検討が進められている外国人労働者をバス運転者として受け入れるための制度の創設についても早期の実現を期待しております。

2030年に1万台の導入を目標に掲げているEVバスについては、政府が目指す50年までのカーボンニュートラル実現のためバス業界としても大きく貢献できるよう国の補助金を大幅に増額していただいて目標の達成に向けて取り組んでいきたいと考えております。

キャッシュレス化については、すでに海外では現金でバスに乗ることができない地域が増えてきています。いまバスに搭載している運賃箱は価格が高額で新札発行に伴う改修にも多額のコストを要します。また、小銭の取扱いは運転者の負担も大きく営業所に集まった小銭を銀行で両替するにも手数料が生じます。こうしたコストを削減できるよう国にはキャッシュレス化の旗振り役を果たしてほしいと思います。

輸送の安全の確保は交通機関の最大の使命です。インバウンド需要が急激に回復した貸切バスでは、本年4月からデジタル運行記録計の使用義務付けのほか、アルコールチェック時の写真撮影や動画による点呼記録保存の義務付けなど、運行管理に関する規制が強化されます。今後、国には監査を強化し、ルールを守れない悪質な事業者を退出させていただきたいと考えております。加えて協会においても、貸切バス安全性評価認定制度について、運転者の技術向上や健康管理等に積極的に取り組む事業者を高く評価するなどの抜本的な見直しを行い、利用者の安心の向上に努めたいと考えております。

いまだコロナ前の水準までに戻らない輸送需要、深刻な運転者不足の問題、長引く燃料価格の高騰など、バスを取り巻く環境はたいへん厳しく、バス事業は危機的な状況に置かれています。しかしながら、こういう時にこそ会員事業者の力をより一層結集し社会的信頼を損なうことのないよう安全運行、事故防止を徹底し、安全・安心なバス輸送サービスの提供に努めてまいります。皆様のご理解ご協力を重ねてお願い申しあげます。

年頭所感

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