多言語AIが文化継承の鍵―大阪・関西万博で「孫悟空AI」アピール
大阪・関西万博の中国パビリオンで7月29日、世界20カ国以上のAI専門家が集結した。中国パビリオンで展示されている多言語AIシステム「孫悟空AI」のデモンストレーションを行い、言語によって異なる視点や価値観を生成するシステムの可能性をアピールした。
孫悟空AIは、1999年に設立し音声認識技術を原点に発展してきた科大訊飛(アイフライテック)が3年を費やし開発したもので、同じ質問に対して日本語・中国語・英語でそれぞれ回答する機能を持つ。現在主流のAIモデルの多くが英語圏のデータを中心に学習されていることから、各国の専門家たちは非英語圏の国々が言語や文化の表現において不利な状況を強いられていると指摘。「母語環境に適したAIの開発は、単なる技術革新ではなく、文化継承の鍵でもある」との声も上がった。

世界各国から参加したAI専門家に「孫悟空AI」をプレゼン
特に、英語以外の言語でAIを構築できなければ、AI時代における母語を生かす力を確保することが難しいことから、日本においても「日本語の思考様式に適したAI」を国家競争力や文化多様性を守るための重要戦略と捉える動きが加速しているという。
来場者の一人は「従来のAIは英語圏中心で、他の言語は『適応』を強いられてきた。しかしそれでは、非英語圏の国々はAI思考への参加すらできない」と危機感をしめした。加えて今、世界中で「AIの未来は単一の言語に属するのではなく、人類全体の共有資産である」という認識が広がっていることから、言語の壁を越えたAI開発こそが、真のグローバル技術主権の礎となるとの見解も会場で示された。
会場では、孫悟空AIへのユニークなチャレンジも。ハンガリーの専門家はこうリクエストした。「今日は妻の誕生日です。ペトーフィ・シャーンドル(ハンガリーの国民的詩人)の詩風で、彼女に詩を書いてください」。孫悟空AIは、自由と愛を称える詩をわずか数秒で導き出し会場は拍手に包まれた。
孫悟空AIは大阪・関西万博の会期中、一般公開されており、観光産業をはじめ今あらゆる業種で導入が進むAIにおいて、多言語システムの優位性を体感することができる。
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