TimeTree未来総研×NEWTが共同調査、年末年始旅行はコロナ前の83%まで回復
TimeTree未来総研と令和トラベルが運営する旅行アプリNEWTはこのほど、2025年から2026年にかけての年末年始(12月25日〜1月4日)の旅行動向に関する共同調査結果を発表した。世界6カ国の「予定データ」とNEWTの「予約データ」を組み合わせた分析から、日本人の年末年始旅行がコロナ前比83%まで回復した一方で、物価高や円安の影響で伸びが鈍化し、需要が踊り場に差しかかっている実態を浮き彫りに。2025年の年末年始に登録された「旅行」予定は2019年比で83%に達し、2023年の73%、2024年の88%と回復傾向を辿ってきたものの、前年より5ポイント減少し、宿泊費の上昇や物価高による家計への圧迫が旅行需要の伸びを鈍化させていることが明らかになった。

「銀行休業日」を予定に入れるのは日本だけ
TimeTreeの予定データをもとに、世界6カ国の年末年始の登録ワードを比較したところ、日本では「休み」関連ワードが上位を独占し、特に「銀行休業日」が上位にランクインしたのは日本のみだった。年末年始に全国一斉で金融機関が休業する日本特有の事情が、行動計画そのものに強く影響を与えていることがうかがえる。
一方、アメリカやイギリスでは「Work(仕事)」が1位となり、年末年始も通常稼働する社会構造が反映された。イギリスでは「Boxing Day(12月26日)」、ドイツでは「Zweiter Weihnachtstag(クリスマス翌日)」といった祝日文化の違いも見られた。台湾や韓国では期末試験や終業式といった教育制度由来の予定が上位に入り、各国の生活文化の差異が鮮明に表れた。

国内旅行は沖縄が3年ぶりの首位、万博閉幕後の大阪は2位に後退
国内旅行の行き先ランキングでは、沖縄が3年ぶりに1位に返り咲いた。冬でも温暖な気候に加え、2025年7月に開業した新テーマパークの影響が、年末年始需要を強く押し上げたと分析されている。
前年1位だった大阪は2位に後退。大阪・関西万博が10月に閉幕し、開催期間中に需要が集中した反動も、年末年始の順位に影響した可能性がある。3位は東京、4位は京都と、都市部が引き続き安定的な人気を維持した。
また、北海道は前年7位から5位に浮上。箱根(6位)、熱海(8位)、伊豆(10位)といった温泉地も上位に入り、「遠出を控えつつ、国内でゆったり過ごす」年末年始スタイルの広がりが見て取れる。

海外は「2泊3日〜3泊4日」の弾丸旅行が主流、韓国・台湾・香港が上位独占
NEWTの予約データによると、年末年始の海外旅行は12月26日出発がピークとなり、帰国は1月2日または6日に集中。旅行日数は2泊3日〜3泊4日が約8割を占め、いわゆる「弾丸海外旅行」が主流となった。
行き先ランキングは、1位・韓国、2位・台湾、3位・香港、4位・ベトナム、5位・グアムと、近距離アジアが上位を独占。費用面でも、グループ合計9万〜17万円台がボリュームゾーンとなり、「距離×価格×満足度」のバランスを重視する傾向が顕著となった。
年代別では20代と50代が海外旅行をけん引する一方、子育て世代は国内志向が強い。時間と可処分所得の条件に応じて、旅先を合理的に選ぶ傾向が世代ごとに明確化された。

為替×物価で見たコスパ最強は韓国とベトナム
為替変動と現地物価の上昇率を総合的に分析した結果、最もコストパフォーマンスが高い渡航先は韓国という結論になった。ウォンに対する円相場の安定と、物価上昇が比較的緩やかな点が、若年層を中心に支持を集めている要因とされる。
4位のベトナムも、依然として物価上昇が緩やかで、為替物価指数が100%を下回る〝おトクな海外〟としての位置付けを維持。一方、人気の高い香港や、欧州で唯一ランクインしたイタリアは、為替と物価の上昇により割高感が強まっている。ただし、ツアー内容や宿泊グレードの調整次第では、十分に選択肢となり得ると分析している。

「量から質」への転換期に入った日本の旅行市場
TimeTree未来総研所長の深川泰斗氏は、「『銀行休業日』を予定に入れる日本独特の行動には、今なお現金文化が色濃く残る社会構造が表れている」と指摘。そのうえで、「国内では沖縄がテーマパーク効果で復活し、海外では韓国やベトナムなど〝賢く選ぶ旅〟が主流になっている。旅行回復が83%で踊り場を迎えた今は、量から質への転換期にある」と分析する。
また、令和トラベルの執行役員でリサーチ統括の大木優紀氏は、「旅行需要は回復しつつあるが、旅の選び方は以前にも増して〝慎重かつ合理的〟になっている」と述べ、「近距離アジアを中心に、移動のしやすさと現地体験の満足度を重視する動きは、NEWTの予約データにも明確に表れている」と語った。
物価高と円安が続く中でも、日本人の旅行意欲は〝賢く、短く、満足度重視〟へと進化している。今回の共同調査は、今後の観光施策、商品造成、インバウンドとアウトバウンドのバランス戦略を考えるうえで、重要な示唆を与える内容となった。
■分析データについて 2019年1月1日〜2026年1月4日の期間で登録されたデータを対象として分析(登録ユーザー数は2019年1月時点で1200万超、2025年11月時点で7000万超) 。分析に使用したデータは、匿名性を保つために統計的に処理されている。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』調べ 集計データ:『NEWT』予約データ 集計対象 :出国日が2025年12月25日〜1月4日までの海外ツアー。
- 【人事異動】JTB 12月1日・26年1月1日付(25/12/06)
- 第3弾は九州・沖縄の旅を提案 KNT―CT「いざ!にっぽん旅キャンペーン」(25/12/04)
- 旅行事業全般が好調で増収増益 JTB・26年3月期中間決算(25/12/03)
- 学生と旅行会社でつくる旅 JATA関西支部と関西エアポート、関空・神戸発海外旅行企画コンテストの企画を募集(25/12/02)
- 東京都、誰もが楽しめる自然体験ツアーづくりのワークショップ参加者募集(25/11/27)










