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観光と漁業の連携を学ぶ 温泉まちづくり研究会、鳥羽の「環境」がテーマ

23/11/29

温泉地が抱える共通課題の解決策を探り、温泉地の活性化を目指す温泉まちづくり研究会(宮﨑光彦代表=宝荘ホテル)が10月30―31日の2日間、三重県・鳥羽温泉郷で開かれた。2022年度から3年間にわたって「環境」をテーマに研究を進めており、今回は鳥羽温泉郷が進める環境対策を学んだ。

同研究会は全国の温泉地への活性化に資することを目的に2008年、公益財団法人日本交通公社が創設。温泉地の課題の解決策を探り、国や自治体、観光関係機関に提言している。現在、阿寒湖温泉(北海道)▽草津温泉(群馬県)▽鳥羽温泉郷(三重県)▽有馬温泉(兵庫県)▽道後温泉(愛媛県)▽由布院温泉(大分県)▽黒川温泉(熊本県)の7温泉地で構成している。

宮﨑代表は開会のあいさつで「環境対策をビジネスの観点から捉える研究も2年目に入りました。緊急課題は宿泊産業の人手不足問題ですが、議論を重ねて問題解決の糸口を見出したい」。

開催地を代表し鳥羽市温泉振興会の吉川勝也会長が「鳥羽の観光業と漁業は業界の枠を越えて連携し、お互いがなくてはならない存在になっています。今回はそういった現状を見てほしい」。

鳥羽温泉郷の取り組みについては、まず鳥羽市温泉振興会の濱口尚紀事務局長が「鳥羽市の人口は1万7千人です。年間430万人の観光客が訪れ、そのうち170万人が宿泊しています」と現況を紹介。同振興会の山下正樹業務推進アドバイザーは「近年、鳥羽付近の海域では磯焼けや黒潮の大蛇行で海藻場がなくなり、魚介類が減少しています。三重県内の海女は現在500人で50年前の8分の1になり、海とともに培ってきた文化の保全が求められています」と話した。

温泉まちづくり研究会

1日目の研究会

鳥羽市観光協会では、そうした危機的な状況から海女さん応援基金を設定。鳥羽市水産研究所は海藻・海洋環境などに関する研究を行い、鳥羽市が海のレッドデーターブックを発刊している。漁師など漁業従事者も海の植林活動などに取り組んでいるという。

鳥羽温泉郷・戸田家の宍倉秀明業務支配人は1900年代に始めた生ごみの堆肥化や調理残滓を活用した真鯛の養殖への貢献を報告。サン浦島悠季の里の吉川好信常務は、地域の漁業従事者と地域イベントなどを通じた交流が生じたことで社員の定着率が向上したことなどを報告した。

また、鳥羽で自然体験ツアーを実施している海島遊民くらぶの江崎貴久さんは、漁業と観光業による“漁観連携”で生産者の消費者の関係が深化したことや、鳥羽の海産物に関するステークホルダー間を調整するなど自身のブランドマネジメントについて説明した。

2日目は石鏡漁港の海女小屋で、海の博物館の平賀大蔵館長に鳥羽や石鏡の海の歴史と文化について聞き、海女でありフォトグラファーでもある大野愛子さんに、海女や撮影を通して感じた鳥羽の海の変化などの話を聞いた。漁師汁や伊勢海老汁も味わった。

温泉まちづくり研究会

2日目の海女小屋で
大野さんの話を聞く研究会メンバー

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