着物で旅する晩秋の名刹 長谷寺を“異日常”な探訪(1) 僧侶の案内で境内散策
奈良県桜井市の名刹・長谷寺は、桜やあじさい、紅葉、牡丹など四季折々の花を楽しめる「花の御寺(みてら)」として知られる。日本最古の巡礼である西国三十三所の第八番礼所としても有名な古刹だ。その長谷寺へ「着物で旅する晩秋の名刹」と題した日帰りバスツアーをサンスターライン(本社・大阪市)が実施。観光庁「交通連携」事業の一環のモニターツアーとして行われたもので、15人が参加した。
梵鐘と法螺貝の響きに癒し
ツアーは12月1日、長谷寺と安倍文殊院を着物姿でめぐった。長谷寺では本尊の十一面観世音菩薩に安寧への感謝と疫病退散を祈願し、安倍文殊院では本堂の国宝文殊菩薩と浮御堂を参拝、長谷寺門前の和風旅館「湯元井谷屋」で昼食を楽しむという内容。ワクチン・検査パッケージにのっとり、事前に接種証明などの提出を依頼した。
除菌対策を施したサンスターラインのバスで9時に大阪・難波を出発。長谷寺に到着後、境内の昭和寮で好みの着物をレンタルし全員、着物姿に変身した。
昭和寮から本堂へ向かう登廊は、着物を着て歩きやすくするため石畳が敷かれているそうで、境内の散策は着物がぴったり。ご僧侶の話を聞きながら、ゆっくりと本堂へ。長谷観音の根本像になる十一面観世音菩薩の「お御足(みあし)」に触れることができる特別拝観により、順番に並んで思いを祈願した。
ご僧侶からは長谷寺にまつわる故事が説明された。源氏物語に「仏の御中には初瀬なむ 日本の中にはあらたなる 験あらはしたまふ 唐土にだに聞こえあむなり(仏様の中では長谷の観音様の霊験があらたかであると唐の国まで聞こえているようです)」と描かれていることや、枕草子や更級日記にも当時の皇族や貴族が長谷寺を参拝している姿が書かれていることを聞いた。参加者からは「改めて長谷寺の奥深さを知りました」などの感想が漏れた。
登廊を上り切ったところにある鐘楼では、ちょうど正午を告げる梵鐘が鳴り響いた。正午に初瀬の山々に響き渡る梵鐘と法螺貝の響きは長谷寺の名物。「梵鐘と法螺貝の響きには心が癒されます」とは参加者の一人。ちなみに長谷寺で正午に梵鐘を鳴らし、法螺貝を吹くのは、若い僧侶の修行のためだそうだ。
この修行は、今から240年前の明和9年(1772年)、吉野へ行く道中に長谷寺を訪れた国学者の本居宣長が「巳の時とて。貝ふき鐘つくなり。むかし清少納言がもうでし時も。にわかにこの貝を吹いでつるに。おどろきたるよし」と、自身だけでなく清少納言も正午の法螺貝を聞いたと書き残しているほど、古くから行われている。
実は、この「梵鐘と法螺貝」を聞くことができたのは偶然ではなく、ツアー企画者のこだわり。時間配分を計算して組み入れたそうだ。
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