海の京都に移住した若者たち 伝統産業を次代に紡ぐ―コウジュササキ・佐々木貴昭さん(1)/短期連載シリーズ
江戸時代に発祥した絹織物「丹後ちりめん」。京都府北部は今も着物の生地の約6割を生産する国内最大の絹織物産地であり、和装文化を支えてきた。その300年の歴史と文化を継承、和装にとどまらず婦人向けのセーターなど洋装も製造するかたわら、「ちりめん街道を守り育てる会」や海の京都観光地域づくりマネジャーとして地域活性化の活動にも取り組んでいるのが、与謝野町に住む佐々木貴昭さん(52歳)だ。(観光交流アドバイザー・釼菱英明)
ふるさと「丹後ちりめんの郷」で挑戦
佐々木さんが暮らす与謝野町は2006年、与謝郡の加悦町・岩滝町・野田川町3町が合併した、丹後半島の南側に位置するまち。丹後ちりめんの産地として知られるものの、最盛期の昭和40年代と比べると生産量は何と3%まで減っている。
彼とは海の京都観光地域づくりマネジャー会議で14年に初めて出会った。観光業界とは無縁の織物業界から与謝野町の一員として参加したのは地域に役立ちたいという思いから。その後、幾度となく彼の会社を訪ね、織物業の衰退とその中で活動する姿に惹かれていた。
佐々木さんの実家はもともと丹後ちりめんを製造していた。岐阜県の全寮制高校に行くため実家を出て、大阪の大学を卒業しIT企業に就職。東京転勤による激務と自身の限界を感じ、子育てするなら田舎がいいとUターンを決意した。呉服問屋で数年経験を積み、36歳の時に出身地へと戻ってきた。
帰郷前に和装業界で経験を積んでも実際に仕事を始め、戸惑いも多かったようだ。丹後に今も残る680軒のうち7―8割は定期的な取引のできる問屋とお付き合いし、長年にわたる商習慣はあまり変わっていない。他業界ではインターネットによる消費者や百貨店などとの直接取引へと流通構造が主流になっても、自社名で製造し完成品として販売している会社は1割程度しかない。
その中にあって、彼の会社は父の時代に地場産業の丹後ちりめんから転換し、オリジナルのシルクのニット素材を用意し仕立て上がりまで自社で企画製造販売。婦人向けのセーター、カーディガン、スーツといった洋装から和装向けの帯も製造している。
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