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空前絶後の宿泊施設「鵜の岬」

1989(平成元年)年度から2022(令和4年)年度まで34年間、全国国民宿舎の定員利用率第1位の記録を続けているのが茨城県立「鵜の岬」である。

97年に新館を建設して58室、204人定員の規模になったのだが、施設が古い時代から利用率はケタ外れの第1位で、少なくとも98年度から10年間くらいは95%以上を続けた。定員利用率96%だった99年度の客室稼働率は実に99・8%というから、年間を通して空室は42室のみである。

まさに空前絶後の宿泊施設と言えよう。

就任当時の利用率が35%だった施設をここまで引き上げた主因は支配人・塙吉七氏を盛り立てる県、町、住民、施設職員、そして利用客という、すごい人の輪と和である。

私は幸い十年間以上、国民宿舎運営委員会で塙氏と一緒だった。氏は非常に謙虚だが、地元、施設職員、お客さまを思う情熱が人の何倍もある。

最初は料理の充実からと「温かい料理を温かく提供すること」に取り組み、宴会の客に料理が行き渡るまで40分かかるなど、軌道に乗るのに5カ月を要した。若い女子職員の「家で母はワイシャツにアイロンをかけ、靴下を洗濯し、靴を磨いて父を送り出します。鵜の岬でもできないか」との提案から宿泊客の靴磨きを徹底した。

新高卒の女子が中心の施設であり、地元十王町に少しでも還元をと、新卒全員入寮で住民票を移させ、住民税が十王町に入るようにする。結婚退職で転出届を出した時、町役場の職員から「結婚ですか?おめでとうございます。長い間ご苦労さまでした」と言われ、町への愛着心が強まった職員。仕入れが多少高くても地元業者にこだわる。子供会に会場を提供して子どもたちの思い出の施設となる。利用率トップに向け協力する客。職員OBを毎年家族ぐるみで会食に招待して結果的に営業マンになってもらう…

(佐藤陸雄=元リーコ代表取締役)

(トラベルニュースat 2023年12月10日号)

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