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クルーズ誘致と港まちづくり 北海道小樽市座談会第2弾(3) 地域に根差した人を育てよう

客船誘致の要は“人”でしかない

―ここから小樽港の未来について語り合っていきたいと思います。第3号埠頭の整備について佐藤さんからご紹介いただきたい。

佐藤 小樽港が30年先に目指す長期構想を作っています。目指すべき将来像は「ひと・ものが世界と行き交う北海道日本海側の物流・交流拠点」ということで、物流と交流の両輪で小樽港の活性化を図っていきます。

基本目標の一つ、観光・交流の基盤強化については、今クルーズ船が大型化しており、少なくとも18万トン級までの船が着岸できるようにし、将来は22万トン級にも対応しようと夢を描いています。第3号埠頭のエリア、ウイングべイとマリーナがある若竹エリアの2つに交流施設を集約していく考えです。第3号埠頭は国際交流空間として、マリーナについては体験型のアミューズメントエリアとしていきたい考えです。性格を分けて観光拠点をつくっていきたいと考えています。フェリーターミナルへのアクセスについても堺町通りから、最終的にはマリーナまでの歩行者動線をきっちりと整備していきます。

2つの拠点が市内の観光施設とリンクしていき回遊性を高めるのが主旨です。

田口 地元の人も楽しんでもらえるということが大切です。つくっていく過程を市民に見せることで他人事ではなく自分事になっていくので、港がどんなふうになっていくのかワクワクさせる仕組み、その役割、市民のメッセージをつなぐことをFMおたるでお手伝いできると思います。

逸見 市民が来なければ観光客は来ません。クルーズ客船が来ていない時も、港を観光拠点と捉えられるような場所にしたいですね。

高野 前回小樽ガラスをテーマに座談会をしましたが(トラベルニュースat6月10日号掲載)、小樽ガラスは小樽に深く根差しているので定着したわけです。そこからさらに飛躍させていくためにはブランディングが必要で、大阪とのつながりなどストーリー性などが大事になってきます。

それと同様、北前船の後背地としての海産物、食を海と結びつけていけるような展開ができればと思っています。どういう小樽にしていくのかというイメージが大事で、共有できるようになればいいと思います。

―最後にポストコロナ期を見据えて港まちづくり、客船誘致に対して田中さんから助言をいただきたいと思います。

田中 我々はクルーズをまったく知らないということを前提にすべきだと思います。

コロナ前の世界のクルーズ人口は3千万人で、日本は30万人ですので1%。世界のクルーズ船は450隻と言われていて日本は3隻で、これも1%に満たない。ここをしっかり見据えておかないといけません。世界は2027年にクルーズ人口は4千万人なると見ています。クルーズは装置産業で、最初の投資金額を何年も利用する観点でクルーズ客船を造ります。いま世界中のクルーズ会社が造船を発注しており、5年間で80隻から100隻の船ができます。それが市場に出てくると4千万人になるという見立てです。つまり、クルーズ産業は供給が需要を生むという発想です。我々日本人は需要があれば造るという感覚ですが、彼らのマーケット観はまず船を造ってから、ということなのです。乗る人は後からついてくる、そうやって世界のクルーズ産業は大きくなりました。

例えば、4千万人になるクルーズ人口の1%の人を呼び込む。40万人の人を北の玄関口である小樽に呼び込もうとすると、定員2千人の船が200回小樽に寄港する。それを小樽で受け入れるのか、どうかという話です。今までの延長線上でクルーズを見ていくと間違ってしまう可能性がある。

私が30数年間クルーズの業務をやってきた中で、客船誘致の要は“人”でしかありません。誘致実績を非常に上げた港は、クルーズに熱心な人が1人いるんです。そういう人を異動のある役所に置くのではなくて、民間でスペシャリストを育てていかなければなりません。地域に根差した人を大切に育てていくことが小樽を飛躍的に伸ばす要因になるのではないかと思っています。

田中三郎さん

田中三郎さん
一般財団法人みなと総合研究財団
クルーズ総合研究所副所長

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