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クルーズ誘致と港まちづくり 北海道小樽市座談会第2弾(2) 北の定点を目指すポテンシャル

まちづくりのイメージの共有を

―小樽の海の魅力をお話しください。

田口 「小樽さんぽ」で書いた「はじめに」を紹介します。私にとって大事な風景としてFMおたるから見えるまちを俯瞰し港が見える写真を載せ、こう書きました。「私は小さなころから小樽が大好きでした。坂のてっぺんにある海が見える親せきの家が好きで、夏休みには札幌の自宅より、小樽にいる方が長かったと思います。山と海に囲まれたこの坂のまちをなんて個性的で魅力的なところなんだろうと思っていました。この本にはこの当時からの私の思いが詰まっています」(一部略)と。亡くなった母もうちに泊まりに来ては新日本海フェリーが出港する姿を見るのが大好きでした。さらに、JR小樽駅を降りたら真っすぐのところに港が見えます。港湾部に働いていたころは必ず飛鳥は第3号埠頭に停泊してほしいと要望し、小樽駅からまっすぐに5万トン級の飛鳥Ⅱが見えました。小樽駅に降り立った市民も観光客も、クルーズ船が停泊しているとまちの風景を賑やかにしてくれると感じています。

田口智子さん

田口智子さん
エフエム小樽放送局
プロデューサー

―全国の港をご存知の田中さんから。

田中 国内で150ポート、海外も100を超えているので、かなりいろいろな港を見てきました。クルーズ船が港に入る目的は大きく2つあります。一つは、観光するために寄港すること。小樽は、なんといっても停泊している船からすぐ近くに繁華街がある。見るところ、楽しめるところが歩いて行ける。こういうところは数少ないのです。これは素晴らしい財産であり、大切にしたらいいと思います。

もう一つ、寄港ではなく発着の港としての小樽の魅力です。今世界中にクルーズ船が運航されていますが、その人たちは行きたい場所をずっと探しています。南極も行ったし、北極海も行ったという中で、意外と手をつけられていないのがカムチャッカです。カムチャッカをクルーズの海域として捉えている会社はまだ数少ない。小樽はカムチャッカへ1週間あれば行って帰れます。これはものすごく優位な点です。バンクーバーはアラスカクルーズの拠点になっています。もともとは物流港でしたが、秘境のアラスカにはクルーズで行くのが一番だと定着し、クルーズ拠点に成長していきました。小樽は北への玄関口になる可能性がある。そして誰を迎え入れるかというと欧米豪、そして中国の人たちです。そういう人たちを迎え入れるには空港がしっかりしていないといけませんが、新千歳空港が1時間少しであるのはたいへん優位なところです。

さらにもう一つ、どこかで1泊する場所があるのも重要な点です。クルーズの前後に余裕のために宿泊します。小樽市内はもちろん2時間ぐらいの場所にニセコや旭川、洞爺湖温泉など、地理的に非常にいい場所にあります。そういうお客様を受け入れるベースがあるのが小樽です。ぜひ、寄港だけではなく、発着の港として育てていければと思っています。

―座談会の前に、小樽観光協会の西條文雪会長にお話を伺う機会があり、経済効果の意味で水や食糧、燃料を供給する発着点の波及効果を仰っていました。小樽港には毎日、新日本海フェリーが乗り入れています。これも小樽港の優位性だと思います。

田中 フェリーは、物流と人流を併せ持っています。フェリーで来た人たちも港の賑わい、港に入って来た時のワクワク感は欲しい。これはクルーズも一緒です。フェリーは物流が中心だから、まちなかから離れた場所でいいということでは解決できない問題があるのではないでしょうか。

佐藤 小樽港のポテンシャルが高いと思い、日々業務に当たっています。これまでのクルーズ誘致については単なる寄港地ではなくて定点クルーズも大切なテーマとして取り組んできました。市としても北の定点を目指す取り組みをしていて、コロナ禍で実現していませんが外国船社から小樽港を定点にしてクルーズを行いたいという話しもありました。我々はドライブ&クルーズ、北海道新幹線が伸びてくるのでレール&クルーズというカテゴリーもできあがってくると思っています。こうした組み合わせで北の定点を目指していきたいと考えています。

また、フェリーについては、小樽市の観光都市という優位性をフェリーとコラボしながら、旅客の増加を図っていきたいと考えています。定期的に来るフェリーをクルーズ船として扱った商品の開発をぜひ進めていきたいですね。

佐藤文俊さん

佐藤文俊さん
小樽市産業港湾部
港湾担当部長

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