【観光業界リーダー年頭所感】公益社団法人日本バス協会 会長 清水一郎 氏
あけましておめでとうございます。日頃より協会の運営にご理解とご支援を賜り御礼申しあげます。
昨年を振り返りますと、新型コロナウイルスの影響、また、燃料価格高騰など、バスを取り巻く環境がたいへん厳しい中ではありましたが、関係の皆様のご尽力により、税制改正や補正予算などでバスに対する支援措置が講じられましたことに心より感謝申しあげる次第です。
さて、新型コロナの影響はすでに3年におよび、長らく人流抑制が講じられるなど、移動需要が大幅に減少し、さらには燃料価格高騰も加わり、バス事業は未曾有の危機に陥っています。一般路線バスの収支はもともと厳しい状況でしたが、コロナ禍の3年間で新たに4千億円を超える巨額の赤字が生じました。これはコロナ前の年間損失額の10倍に相当します。生活様式の変容などで、需要が元の水準までは戻らないと予想される中、地域の足の維持に努めることが求められています。貸切バスも、コロナ禍で消失したインバウンドや団体旅行の需要は、いまだに回復の見通しが立ちません。
このような状況を受けて昨年11月、バス業界単独としては初めて「バス危機突破 総決起大会」を開催しました。全国から約200名のバス事業者の方々が集結し、ご出席いただいた90名を超える国会議員の先生方へ、バス事業の危機感を訴えるとともに3つの要望事項について決議を行いました。1つは、固定資産税減免措置の実現です。地域のバス路線を存続していくには固定費用の負担を軽減することが必要不可欠であることから、バス事業用地に対する固定資産税減免措置を求めていましたが、令和5年度税制改正でEVバスを導入する際の固定資産税の減免措置が講じられることとなりました。また2つ目は、昨年10月からようやく始まった「全国旅行支援」をあと3年間は続けてほしいことです。バスは車内換気が優れており、今般、新型コロナ・ガイドラインが見直され、バス車内での飲食・飲酒の制限も緩和されました。国には、バスで団体旅行ができるような機運を維持し続けることを期待しています。3つ目は、EVバスの導入です。EVバス導入は、国が推し進めるカーボンニュートラル推進の切り札になると考えております。いまたいへん厳しい状況にあるバス事業においてこれを積極的に導入していくためには、国の財政支援が不可欠です。先の固定資産税減免措置と大幅に拡充された補助金でEVバス導入のはずみとなることを期待しています。
安全確保は交通機関の最大の使命です。昨年は4月に北海道知床沖で観光船の死亡事故、そして10月には貸切バスにおいても乗客が死亡する痛ましい事故が発生してしまいました。今こそ運行管理の重要性を再認識し、運行管理制度の充実を求める社会の要請に応える必要があります。
バス事業は、いま危機的な経営状況にありますが、会員事業者の力を更に結集して、社会的信頼を維持するため引き続き安全対策及び事故防止の徹底を図り、安全・安心な輸送サービスの提供に努めてまいります。
今年はバスが走りはじめてからちょうど120年を迎えます。9月20日のバスの日に向けて、「バスで日本の未来を明るく」といった前向きな発信をしていきたいと考えています。皆様のご理解、ご協力を重ねてお願い申しあげます。
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