講釈師が語る一休さんの四 てい髪し「周建」と名乗る
その安国寺の像外和尚は顎に白いやぎのような髭を生やし「千菊丸と申すのか?」「はい、和尚様」「其方の母君からくれぐれも頼むと言われておるからな、まずは頭を剃ろうかの」シャリシャリと髪を落とします「どうじゃ、髪がなくなった気持ちは」「はい、おつむりが風邪を引きそうです」「ははは、面白いことを言う、小増じゃ、まずは寺に入れば、名前を代えなければならん、仏に仕える身であるからな、千菊丸では幼すぎるからな、ではその方はこれから、周建と名乗るのじゃ、よいか、分かったな」「はい和尚様」「よし!これからは修業に励むのじゃ」と、これから新たな生活が始まりました。
ある晩のこと、像外和尚が「これこれ、周建」「はい、和尚様」「今気が付いたんじゃが、本堂の中のお灯明を消すのを忘れてしまった、すまないが、周建行って消してくれんかの」「はい、承知いたしました」。
周建は本堂にやってくると、なるほど、仏前のお灯明が消し忘れてありましたから、ぴょんと飛び上がって、口でぷうと吹き消して、そのまま戻ってまいりました。
「和尚様確かに消してまいりました」「おぉそうか、それはご苦労であった。で、周建どのように消してきたのじゃ」…
(旭堂南龍=講談師)
(トラベルニュースat 2020年5月10日号)
- 講釈師が語る荒川十太夫その五 松平の殿様に「先ずは…」と話す(24/02/19)
- 講釈師が語る荒川十太夫その四 松平の殿様に平身低頭する十太夫(23/12/15)
- 講釈師が語る荒川十太夫その三 五佐衛門、沸々と怒りが湧いて…(23/11/20)
- 講釈師が語る荒川十太夫その二 出会い頭に山門で杉田様と出会う(23/10/19)
- 講釈師が語る荒川十太夫その一 赤穂浪士への墓参が絶えぬ泉岳寺(23/09/20)
- 講釈師が語る一休さんの最終回 禅師、床の中で辞世の歌を詠む(23/07/20)
- 講釈師が語る一休さんの三十三 地獄太夫に引導の歌を読み返す(23/06/20)