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講釈師が語る円山応挙その九 太夫、絵姿になって親を救う

「それで、その娘さんは。随分昔に攫われた」「ええ。そうだす。ワテら夫婦は、元大坂の天満の天神さんの辺りに住んでおりました。おみつと言う娘が一人居てましたな。其のころはわしらも必死に働いてまして、おみつも寂しい思いをさせてましたんやろな、遊んで欲しいと言われた時に、天神さんの境内で一人で遊んでおけと言うて、寂しそうに出て行った後ろ姿がおみつを見た最後でございます。人攫いに遭いましたんや、夫婦の者が気が違ったようになって必死に探しましたんやが、何処を探しても、もう見つかりませなんだ。それで其の日を命日と思うて、未だに供養しております。あれ?そう言うたら其の匂袋はおみつが作ってくれいとせがんだ物。この婆さんが、それやったら、ええ布で拵えてやろうと唐錦の陣羽織の裏を切り取って、ひょっとしてそれ? おみつのやおまへんか?」

流石の応挙も愕然としました。しばらくの間自分の描きました幽霊画をじっと見つめておりましたが「不思議な事もあるもんやな。人は、死んだらそれっきりやと思うていたけども、甚兵衛はん、お仲はん。驚いたいかんで。ええか?此の二枚の画は、あんたらの娘さんや」「ええ?これがおみつ」「そうや。ワシは紫から、いやおみつさんから、親を探してくれいと預かったんがこの匂袋。また親に会いたい一心でわしの手を借りて絵姿となってあんたら二人の災難を救いに現れたんや」「へぇ、これがおみつ? よう帰って来てくれたな。すまなんだ。怖かったやろう、辛かったやろう、堪忍してや、堪忍してや」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2025年5月10日号)

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