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講釈師が語る黒雲の辰その二 信兵衛、御用金をいかれてしまう

ただもう嬉しさのあまり、後先の分別もなく出立の用意に及びまして、七十五両の大金を胴巻に、これから夜を日に継いで江戸へ到着、本所横網の三河屋と言う宿屋に泊まります。

「やっと江戸に着いた、講談やからこんなに短いけど、ほんまは二十日間くらい掛かってるからな。今晩はゆっくり手足を伸ばして眠れますわい」これから久々に三合ほどの酒を呑み、良い心地に酔払ってしまい、翌日は昼ごろまで寝過ごしてしまうから、女子衆に起こされて「うわぁ、えらいこっちゃ、早ういかんならん」飯も食わず御用金を懐に飛び出した、ところが表は大変な人混み

「これは一体、何だすねん」「今日は五月二十八日、両国の川開きで花火があるんだ」「噂には聞いたことがあるが、見るのは初めてや、夜にはゆっくり見せてもらおう」

と此の日の両国橋は中々渡れるものではありません。人の波に押されて「えらい、すんまへん」と漸く大和守のお屋敷へ辿り着いたのが、もう夕暮れ前

「ごめんやす、国許より御用金を持って参りました。信兵衛という者で」「誠にご苦労である、待ち侘びておったぞ」「わしも道中、朝早う出立して日が暮れるまで歩いて、一所懸命此の胴巻を、えらいこっちゃ」「どうした信兵衛」「実は、宿屋に泊まった時泥棒に盗られたらあかんと思うて預けてたんをコロっと忘れて金も持たんも飛び出したんや」「迂闊な奴。大切な金子だ、忘れてどうする。早う戻れ、誰か一人付けてやろうか」「ご安心を」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2025年7月10日号)

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