桜と着物で彩る「花の御寺」 奈良桜井・長谷寺へツアー(1) 本堂、遥拝、ショーに感動
奈良県桜井市の長谷寺。日本最古の巡礼である西国三十三所の第八番札所としても「花の御寺」としても知られている名刹だ。この長谷寺で花を愛で、観音様に安寧を願い、着物に身を包んで境内の多くの文化財に触れるユニークなツアーが3月28日に行われた。
企画したのは、まちづくり観光研究所奈良サテライトオフィスツーリズムプランナーの峪口治恵さん。花の御寺が持つ魅力を最大限に引き出すのは「日本文化を象徴する着物」だと捉えた。長谷寺から特別の許可も得て国宝・本堂で和装ショーも開催。長谷寺の魅力をさらに掘り起こすことを目指した。
ツアーは「桜舞う花の御寺 長谷寺を着物で拝す 観音様に感謝する特別な1日」と題した日帰りバスツアー。大阪・難波を8時に出発し、9時過ぎに長谷寺に到着した。昭和寮で着物を着つけてもらった参加者は「着物でお寺を散策するなんて、これまで考えたこともなかった」「着物自体を着る機会がないので、貴重な体験」といった好評の声であふれた。
6月30日まで特別拝観中の本坊では、座高10メートルを超える本尊の十一面観世音菩薩立像の御影大画軸、長谷寺縁起絵巻全巻を見学。あいにくの雨模様だったが、屋根付きの階段で有名な登廊で「雨が降っていても屋根があるからよかったね」と話しつつ本堂へ。登廊の階段幅や段差は、着物で歩くことを前提とした設計で、互いにポートレート撮影をしながらのんびり上った。
国宝の本堂では、僧侶の案内で十一面観世音菩薩立像や雨宝童子立像、難陀龍王立像など数多くの寺宝を見学。特に、大きな観音様を間近に拝顔した時には声にならず自然と手を合わす姿が印象的だった。
境内に咲く満開の桜を眺めながらの昼食後は、ツアーの目玉「和装ショー」。そのオープニングで、本堂内の内舞台に設けられた特別席に着座していた一行の背筋がすっと伸びた。経を唱えながら複数の僧侶が列をなし遥拝を始めたからだ。
遥拝とは遠く離れたところから神仏などを遥かに拝むことで、長谷寺では僧侶たちが外舞台から遠くの与喜山の天満大自在天神、愛宕山の愛宕大権現、弘法大師御影堂のお大師様、そのあと奥の院、五重塔に向かって神々や仏に祈りを捧げる。その姿に、見ている側の精神が清められる雰囲気に包まれる。実は、この遥拝もツアーの特別企画。通常は朝勤行「祈りの回廊」の後に行われるものだが、長谷寺の協力によって実現した。
続いて本堂に、尺八と琴の雅な音色が響く。尺八と琴の音色を背景に人生の節目で身にまとう着物が次々と披露される。七五三、十三詣り、成人式、白無垢・色打掛・引き振袖など人生の節目で着る着物をまとったモデルが、観音様の膝元から次々に登場。長谷寺にいわれがある昔話「わらしべ長者」の寸劇、奈良・奈良町の元林院の芸鼓と舞妓の演舞など、国宝の本堂がいつになく華やいだ。
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