旅行業の近未来予想図 鹿児島県協会・組合が問う「2030年の旅行業」(4) 人口減、低成長時代への問題提起
井門隆夫さん 市場けん引のシニア世代も変革
1997年を境に、働く人の比率が高齢化によって下がっていきました。以降20年、私の報酬もまったく増えず失われた20年と化しました。一方で中国、韓国、東南アジアでは労働人口は高まっています。若い人がどんどん生まれ、経済が成長しGDPが伸びている。結果、これらの国の人口ボーナスを訪日旅行という形で享受しています。問題はこれから。1997年に日本のアウトバウンドが止まったのはGDPの伸びが止まったから。給料の伸びも止まり、出国者数も止まった。ですから、他の国々も働く人口の比率が下がり、日本と同じようなことが起きたら…という恐れをずっと抱いています。
この10年間、安倍政権は正規よりも非正規労働者を増やし、平均給与は下がっていきました。これ以上実質賃金が減るようであれば旅行業界は奈落の底に落ちていくしかない。60歳代のアクティブシニアはずっと増えてきましたが、ここ2、3年で減少に転じます。1970年代から団塊の世代が支えてくれた日本の観光がいよいよ最後の10年間に入ってきた。その間どう刈り取るかというわけですが、それが終わったらどうするのか。本当に考えていかないといけません。

井門 隆夫さん
高崎経済大学地域政策学部
観光政策学科准教授
私は大学で、テストも含め紙を使いません。学生にリアクションを求めるのはすべてスマホ。なぜ大手旅行業はROE(自己資本比率)が低く、エボラブルアジアやエイチ・アイ・エスといった新興旅行会社のROEは高いのか―を学生はスマホをいじって調べてどんどん書く。授業中スマホをしまえという先生はそろそろ一掃される時代です。観光や地域を学ぶ学生であれば、教室に来る必要もありません。アメリカのミネルバ大学は4年間、世界の7つの都市に滞在して、そのまちの社会問題を学ぶ完全オンライン大学です。私のゼミでも、4年生になると1年間、地方に行ってそこで働くということをやっています。そうすると学生がガラッと変わります。自分で考え乗り越えていくというのが社会人基礎力の主体性、コミュニケーション力がつく。それを観光学ではつくることができます。
テクノロジーがこれだけ発展し、すべての国が生産性向上に向けテクノロジーを使っている時代にあって、テレックスやファクスと言っている業界でいいんでしょうか。
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