アイランドホッピング 東京―伊豆諸島―下田
伊豆半島の東の海上に並ぶ伊豆諸島は、一番大きな伊豆大島を先頭に利島(としま)、新島(にいじま)、式根島(しきねじま)、神津島(こうづしま)が点々と並んでいます。伊豆半島は静岡県ですが、この島々は東京都の所属です。この島々には東海汽船と、そのグループ会社の神新汽船の貨客船が結んでいます。
梅雨明け間近の7月中旬、船で伊豆諸島を廻ってみました。東京・竹芝桟橋から東海汽船の「さるびあ丸」に乗船して神津島まで行き、神新汽船の「フェリーあぜりあ」に乗り換えて下田に上陸するという行程でした。まさにアイランドホッピングですが、船に乗るのが目的なので、島に降りての観光はせずに1泊2日18時間あまりのクルーズでした。
「さるびあ丸」が出港したのは深夜23時。この30分前に、三宅島経由で八丈島まで行く貨客船「橘丸」が出港しました。乗船して荷物を船室に置いて、最上階のレストランで枝豆をつまみにビールで乾杯。船はイルミネーションが灯るレインボーブリッジをくぐり、左には新しい東京のクルーズターミナルを見て、両側には巨大なコンテナターミナルの夜景が見えました。やがて、羽田空港を右手に、さらに川崎、横浜、横須賀の夜景を見ながら東京湾を南下して、浦賀水道を抜けて太平洋へと乗り出しました。
伊豆大島では島の東側にある岡田港に5時前に到着しました。南西からの風が強くて波が高く、島の西側の元町の桟橋では船が揺れて人も荷物も下ろせないためです。伊豆諸島の島の多くには東西に港があり、天候によって到着する港が変わります。ちょうど朝日があがった岸壁にはたくさんの乗客が降り、船のクレーンがコンテナに入った貨物を次々と岸壁に下ろしました。20分ほどの停泊で出港し利島に向かいました。海上には白波がたっていますが、8千総トンの同船はほとんど揺れずに航海しました。波長の長いうねりがあまりないためです。
利島、新島、式根島での停泊時間はとても短いのですが、この航海では各島で100―150名が下船し、港にずらりと並ぶ民宿の車へと乗りこんでいきました。竹芝桟橋の客船ターミナルには、島に渡る前に必ず宿を予約してくださいというポスターが掲示されていました。シーズンには、島に来たけれど泊まる宿がないといった事態があるのでしょう…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2024年9月10日号)
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