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クルーズ人口100万人 就航船が増え、いよいよ構想実現

クルーズへの年間乗船人数をクルーズ人口と呼んでおり、現在の世界のクルーズ人口は3460万人とコロナ禍前に完全に回復して増加基調にあります。一方、日本のクルーズ人口はコロナ禍直前に35万人にまで増加しましたが、2024年の時点で22万人にまで回復したものの、依然、コロナ禍前の60%あまりに留まっています。

海運と造船産業がいずれも世界の10%以上を占めている海事大国で、海に囲まれた島国であり海洋国家を標榜しているのに、海で楽しむレジャーであるクルーズにおいては、クルーズ人口が世界の1%に留まっているのはなぜなのか。日本人は、海洋民族ではなく農耕民族だとか、文化的に合わないだとか、日本の近海の海が荒れるからだとかいろいろと言われていますが、その原因はよくわかっていません。

こうしたクルーズ観光の低迷を脱却しようと、国土交通省がクルーズ産業の活性化に力を入れ始めました。これまでは国内のクルーズ市場というよりは、隣国中国発着のクルーズ客船の誘致、すなわちインバウンド誘致が中心になっていましたが、国内マーケットの拡大にも目を向けたのでした。本年初めに有識者会議を立ち上げて、議論を深めて、5年後を目途にクルーズ人口を100万人にまで増やす目標をたてました。現在の約5倍の規模です。

このクルーズ人口100万人構想は、実は、はじめてのものではありません。日本のクルーズ元年に呼ばれた1989年から10年ほどたったころ、国は日本のクルーズ産業の成長が思わしくないことの原因を探るために有識者会議を立ち上げて、その原因を探り、それを解決してマーケット拡大のための処方箋を提示しており、その時にも日本のクルーズ人口を100万人にする構想を発表しています。

その中で最もキーになったのは、高級船ばかりに偏ったクルーズを、アメリカ型の一般庶民が楽しめるクルーズにまで商品のバラエティを広げることでした。2013年に米プリンセスクルーズ、そしてコスタ・クルーズ、MSCクルーズなどが日本市場に進出してマーケットを着実に広げ19年には35万人にまで達しました。

しかし、コロナ禍により激減し、現在は回復途上です。まず日本のクルーズ運航2社がラグジュアリ船の増強に着手し、プリンセスは日本発着船を2隻に増強…

(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)

(トラベルニュースat 2025年11月10日号)

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