フライ&クルーズ
クルーズとは客船による観光を意味しますが、1960年代にアメリカで誕生した現代クルーズは、客船と飛行機を組み合わせることで大きく成長しました。
それまでクルーズと言えば需要の大きい大都市の港からの発着が一般的でしたが、現代クルーズ発祥の地である米マイアミでは地元需要だけでなく、全米各地から飛行機でお客を運んできて、そこからクルーズに乗せるという新しいスタイルを積極的に導入し、フライ&クルーズと呼ばれました。これによって船会社はマーケットを全米に広げることができ、クルーズ客は旅行期間を短くすることができ、たいくつな大海原を何日も航海することなく素晴らしい目的地に早く着くことができ、船酔いで苦しむ時間も短くなりました。
ちょうど米国の航空業界の規制緩和の時期とも重なり、クルーズ各が自ら航空便の手配も行ったので各地の旅行代理店はクルーズ会社に連絡するだけで船も航空機の手配もワンストップでできました。当初はクルーズ料金に飛行機代も含まれたものも多くありました。
こうしてフライ&クルーズにすることで、仕事をもつ現役世代でも短い休みで手軽にクルーズを楽しむことができるようになりました。もちろん現代クルーズが、現在のような巨大なレジャー産業に成長できた理由は、港へのアクセスの便利さだけでなく、クルーズ自体がハイレベルなサービスを提供して、かつリーズナブルな価格のレジャー商品であったことにあります。この結果、一部の富裕層のレジャーだったクルーズは大衆が楽しめる気軽なものになりました。そして各船会社はリーズナブルプライスを実現するために、運航隻数の増加と、船の大型化にまい進してきました。
日本では、クルーズ運航会社自身が航空機の手配まですることが難しかったこともあり、フライ&クルーズはあまり普及しませんでした。最初に、これを手掛けたのは…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2025年10月10日号)
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