多くの文化人にも愛された湯　栃木県塩原温泉／やまの宿下藤屋・渡邊匡美さん

群馬県・前橋ホテルルカの野口露珠さんよりバトンを受け取りました栃木県・塩原温泉やまの宿下藤屋の渡邊匡美でございます。

塩原温泉は良質な源泉に恵まれ長い歴史を刻んできました。発祥は西暦８０６年。平安時代の前期にあたります。「塩原十一湯」と呼ばれる11の温泉地からそれぞれ違う成分の湯が湧き、日本に存在する10種類の泉質のうち６種類を有しています。一つのエリアに、多様な泉質や成分の違う温泉が湧いているのは全国的にも珍しく、体調や気分などに合わせて、それぞれの泉質や効能をお楽しみいただけます。

「いいお湯でした」。お客様からのこのお言葉をいただくと、良質な源泉に恵まれ生業にできていること、温泉を守ってきてくれた先人たちへの感謝の気持ちで一杯になります。昔も今も変わらず、人々は豊かな自然に包まれ、名湯に浸かり心身ともに癒されたくなるものです。明治・大正・昭和期にはたくさんの文化人たちが塩原温泉を訪れ、名湯に浸かり数々の作品を誕生させています。

明治年間に何度も私どもを訪れてくださった山岡鐵舟は、逗留中に「風窓猶欲傲義皇」（風窓猶ほ義皇におごらんと欲す）霊泉ともいうべき湯に浸かり、ほどよく酔って熱った胸元に吹き入る風の爽快感は、世事を忘れて安逸に時を過ごしたという義皇人にもほこりたくなるものだと、揮毫してくれています…

（ＪＫＫ＝全旅連女性経営者の会リレーコラム）

（トラベルニュースat 2022年10月25日号）