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講釈師が語る一休さんの十六 伊予局の枕もとに観音様が…

京都は嵯峨野の詫び住まいをしておりました宗純の母、伊予局が下男に「七兵衛、暫く修行の旅へ出立と久方ぶりに挨拶に寄りました宗純の顔が、何とはなしに沈んでおりました」「まぁ確かに謙翁和尚がなくなってしまって、落ちこんでいるのは確かですが、手前には元気に見えましたが?」

子を思う母はその晩中々眠れません、ようやっとトロリとした真夜中の九つ過ぎ「起きよ、起きるのじゃ」と荘厳なる声で伊予局に話しかける者がある、寝ぼけ眼を擦りながら、顔を上げると枕もとに金色に光り輝く観音様がお立ち寄りなり

「其方の倅が自ら命を絶とうとしておる、今すぐに近江の石山寺へ行け、良いな近江は石山寺である」

とだけお話になった直後に眩いほど光り輝いて、また元の暗闇となるから「七兵衛起きて下され」と声をあげれば、寝ぼけた声で「はい、なんですか?奥様」「実は先ほど、観音様が枕もとに立たれて、宗純が近江の石山寺で自ら命を絶とうしているとのこと、何卒宗純を連れ戻して下さい」「はい、承知致しました」とすっかり目が覚めた下男の七兵衛は取る物もとりあえず出立いたします。

一方こちらは宗純、近江の石山寺で七日間、謙翁和尚を供養し且つ悟りに達ようと一心不乱になって修行のため篭っておりましたが、やがて何もかも投げ出してしまいたくなり

「もう死のう。死んで謙翁和尚の許で修業をしよう」

琵琶湖に入水をしようとしたところへ後ろからバラバラと駆けつけて、背中から宗純を引きとめようとする者がある「若様!何を早まった事をなさるので!」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2021年7月10日号)

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