追い抜かれるバス運動
あるバス会社が「追い抜かれるバス」運動を行っている。かつては、旅行会社から依頼されたコースを法定速度で走ると行程表に示された到着時刻に間に合わず、どうしてもスピード超過になる傾向だった。
しかしコロナ禍でバス運行の依頼はほとんどない。そこではたと考えた。スピード超過は安心安全な運行ではないし、運転に緊張を強いられるドライバーの疲労にもつながる。事故を起こすと会社の信用は失墜する。バスの修理にかかる費用も安いものではないし、下手をすれば廃車になる。人身事故にでもなれば会社存亡の危機に陥ることだってある。
そう考えると法定速度を守っての運行は、ドライバーの運転する心に余裕ができるし、疲れない。仮に事故を起こしたとしても最小限で抑えることができる。到着する時間が遅れて勤務時間がオーバーすると残業代を支払わなければならないが、事故を起こして失う会社の信用や修理費に比べると安いものだ。この会社はそう考え、賛同してもらえない旅行会社からの仕事は受けない、と決めた。
コロナ禍でなければ、このバス会社はこうした考えになっていなかっただろう。我々も今だからこそ、気づかされたことがあるはずだ。気づいたことを行動に移す、そんな心持ちで新しい年を過ごそう。
(トラベルニュースat 22年1月1日号)
- 岩木語録が伝える「情」(24/03/27)
- 北陸応援割に思う(24/03/13)
- 応援割の混乱をプラスに(24/02/28)
- 非常時に発揮するGNN理論(24/02/10)
- 北陸への送客支援を(24/01/25)
- 「雪風」の空気感(24/01/05)
- 旅行社が手数料を払う時代(23/12/10)