顧客満足を生む旅行業
旅行業を営む親から呼び戻されて、何も分からないまま日帰り旅行の添乗に行くよう命じられた。昼食会場に着いて驚いた。あらかじめ準備されていたのだろう。カピカピに乾いた刺身、冷めきった天ぷら…。日帰り旅行の楽しみの一つである昼食がこんなのでいいのか、普段と異なる時間を過ごしたい客に自宅で食べる料理以下のものを出していいのか。「手数料をもらえるとはいえ、自分でも食べたくない料理をお客様に勧めるのは嫌だ」。
それが旅行業の原点になった。経営者となった今、顧客が満足できうる宿、自身で徹底的に調べあげた上で納得できる施設にしか立ち寄らない。先日は地元で評判の行列ができる料理店と交渉を重ね、バス2台口を送客した。行列に割り込むのは申し訳ないので店の裏口から入った。「手数料の有無ではなく、個人では行けない所や対応が難しい所をツアーに仕上げるのが我々の役目」。
自身が添乗できない場合でも、顧客の行先でこだわりの料理店を片っ端から調べ上げる。「あんたの熱意はよくわかった。安心してなさい。絶対に満足して帰ってもらえる料理を出しますから」と料理人に言わしめるほど話し込む。手数料がなくても企画料として応じてもらえる顧客との信頼関係でこそ成り立つ中小旅行会社ならではの“特権”を見た。
(トラベルニュースat 25年6月25日号)
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