四字熟語で2024年の観光を占う(2) 人畜無外・日進逆歩
「人」手不足を「逆」手にとって
【人蓄無外】 人畜無害は、人や動物に有害でないことを意味し、転じて「どんなものにも害を与えない人、平凡で取り柄もない人」のことも指す。でも今や、取り柄のない人ですら不足…。
「人」を選んだ橋爪さんも「観光業界の最大の課題は人材。インバウンド増もあり好況だが、ホテル、交通業界も人手不足は深刻」と指摘する。特に今年は「労働時間の上限によって、運送業界では『2024年問題』への対応が課題」と言う通り、観光に欠かせない貸切バスや路線バス、タクシーなど“足”の確保もままならない。「自家用車による有償運送をめぐる議論が盛ん」と橋爪さんがいうライドシェアなど、所有や専業の考えを改めいろいろなモノ・コトをシェアし、限られた人材を「蓄」めていく方向にシフトしていかなければならないのかも。
それゆえ、橋爪さんは「いかに人材難を乗り切るのか、24年が観光業界のターニングポイントとなる」と見通す。
「外」を選んだ佐藤さんも人材難を憂う。「団塊ジュニア以下の年齢の人口が少なくなっている上に非婚志向が高まり、日本人人口の減少が続き『外国人観光客』依存が必須となり、『外国人労働者』への依存も避けられまい」とし、もはや外国人「無」しでは立ち行かない。
佐藤さんが選んだ観字「外」には訪日外客、外資も含まれている。「エアビーアンドビーのサイト内で最も検索された旅行先として日本が世界の最上位で、その検索数の増加率も最高」だったとの通り、24年の各種旅行見通しにおいてもインバウンドは引き続き好調で、コロナ禍前を上回る過去最高の訪日客数になることが予測されている。また、京都市に「バンヤンツリー・東山京都」、大阪市に「フォーシーズンズホテル大阪」がオープンを控えているなど「高額消費の外国人客需要に応える『外資系ホテル』の開業ラッシュ」は今年も続く。
【日進逆歩】 造語の元となった「日進月歩」は、絶え間なくどんどん進歩していくことを意味しているが、「日」本の歩みはどうも逆に進んでいるようで…。
井門さんが選んだのは「逆」。「日本全国の人口ピラミッドが正三角形から逆三角形となり始める。まだ頂点は50代前半だが、2040年には70歳が頂点となり完全逆三角形が完成する。23年に生まれた新生児数は、75歳に比べわずか29%。20歳と比べても65%。日本が存続できると思っているのは、大人だけではないでしょうか」と、一業界の人手不足にとどまらず日本の人口構造が逆張りに転換する。
就労構造も逆転する。「いまや複数の上司に1人の部下の時代。まず逆転させるべきは給与制度。初任給が最も高く、年々減っていくことでちょうど良くなることに気づくことが大切です。スキルや副業、起業で補えばよい」。井門さんが従来から指摘していることだが、奨学金という名の教育ローンの返済に苦労し、結婚しようにも子育てしようにも先立つものがない…そんな国に進歩があるとは思えなくなってしまう。
2024年は「すべてが逆転していく年」だけど、熱烈な虎キチの井門さんは正の方向への逆転も信じている。23年は阪神タイガースが38年ぶりにアレのアレ日本一を達成した。23年シーズンで、12球団中もっとも逆転勝ちが多かったのが阪神だった。「阪神タイガースが日本一になるのも当然です」。で、24年観光の「スローガンは、Tourism turn it on!(ツーリズム、ターンおーん)でいきたいと思います」。
(トラベルニュースat 2024年1月1日号)
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