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講釈師が語る一休さんの三十二 地獄太夫と会いに遊郭へ向かう

京都で大名同士の争いで都が修羅の巷となったために、京都を後にいたします。

大阪へ出て参りまして住吉大社の照西庵へ住まいを移すことになます。近郷近在の者も生き仏の一休禅師がお出でになったので皆が甲斐甲斐しくお世話をします。

「こんにちは」「おぉこれは茶太郎か」「実は斯様なお手紙が、堺は高須の遊郭から届けられました」「遊郭から?ワシはそういった所へ上がったことはないが」「ひょっとして架空請求書?」「そんなものであるまい」「そやけど一休禅師、遊郭いうたらあんまりエエ噂ききませんで。この間に前を通りかかりましたんや。そしたら遣手のばあさんが『ええ子がおる、ええ子がおる』言うてね。そこまで言うんやたら、ええ子なんやろうなと思って上がって待ってたら、その婆さんがええ子やったんですわ。あそこは楽園やない。地獄や」「そこと同じくにしてはならん。まぁともかく」

と手紙を開けば、はても艶やかなる女性(にょしょう)の筆で「本来も 無き古の 我なれば 死に行く方も 何もかも無し」=元来何もない所からまいりました私ですが、命が終わる時にもまた何も残せません。

「朝露は 消え残りても 有りぬべし 誰かこの世に 残り果つべき」=朝露は朝には水滴を葉っぱのキラキラさせて姿を現して夕方になったら消えてしまします。けれども次の朝には再び姿を現します。それに比べて人の命のはかないことです。

「ほう。手紙の末尾に『じごく』と認められている。地獄から手紙が届けられた。御存知かな?」「ああ、ひょっとしたら堺の高須の遊郭、鍵屋という所には地獄太夫という絶世の美女が居るとのことです」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2023年3月10日号)

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