マルハラで病むなら旅に出よう
昨今、セ・パ両リーグの話題を聞かない日はなくなりました。
野球の話ではありません。セクハラとパワハラの話。私が日々気をつけているのはマルハラ。メッセージの文末で句点(マル)は打たない、が現在の10―20代であるZ世代では常識です。マルを打った瞬間、パワハラです。
ハラスメントの歴史をたどると、89年にセクハラが新語・流行語大賞を受賞したころに始まりました。87年の労働基準法改正で週48時間制が40時間へと変わった一方、バブル崩壊で人件費抑制へとシフトした90年代初頭にその発端時期が重なります。以後、女性の非正規雇用が労働市場を支えるかたわらで実質賃金が下がり続けた時代が、ハラスメントの背景にあると思います。95年から世界に先駆けて生産年齢人口が減少を始め、女性の労働参加があたりまえとなりましたが、男女平等とはほど遠い社会規範が根づく日本で、ハラスメントが増えていったのは時代や社会構造上、当然の成り行きだったかもしれません。
Z世代は、ハラスメントが始まった第一世代の子どもたちで○○ハラ・ネイティブ。今や誰もが対象となり、酒を一緒に飲む時代も終わり。他人に酒を注ぐお勺文化などは風前の灯火です。食事会(飲み会という言葉も消えました)でのサラダ取り分けもだめ。野菜が嫌いな人もいるのに、強制していることになるからです。80年代以前の何でもありの時代に働いていた旧人類はおとなしくしているのが一番。喋ればそれがマイクロアグレッション(微細な攻撃)になるおそれがあります。
とはいえ、そんな時代の裏返しでしょうか。大企業にいくつも内定をもらうのは…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2025年7月25日号)
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