車窓越しの交流で集客
JR四国では、車窓の景観を楽しみながら沿線の食や文化を体験できる観光列車「ものがたり列車」シリーズを運行している。2014年から愛媛県の伊予灘に沿って走る「伊予灘ものがたり」を皮切りに、17年に香川県・多度津駅から徳島県・大歩危駅間で渓谷美を楽しむ「四国まんなか千年ものがたり」、20年からは坂本龍馬をはじめとする幕末の志士たちの軌跡をたどる「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」などがある。
このうち、伊予灘ものがたりは24年に運行10周年を迎え、今年11月8日には乗車数9万人を達成。穏やかな伊予灘の景観や展望に配慮した車両、車内で味わえる郷土色豊かなメニューが人気の要因だが、もう一つ伊予灘ものがたりが多くの人に支持を集めているのには理由がある。
それは、沿線の人たちのもてなしだ。かと言って、何か特別なことをしているわけではない。列車が走るたびに、沿線に住む人たちが垂れ幕や旗などを持って列車に向かって手をふってくれる。クラブ活動で練習中の生徒たちもプレイを止めて列車に手をふる。その姿を観たくて180回、500回も繰り返し乗っている人もいるという。
伊予灘ものがたりの9万人は、車窓越しの交流が生んだ観光の本質を示唆した数だと受け止めたい。
(トラベルニュースat 25年11月10日号)
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