会員施設のサービスを世界一に 日本旅館協会・北原会長に聞く(2) 生産性向上も両輪で推進
協会会員数減少に危機感 簡易宿所にも門戸を開く
―今期、生産性向上委員会をつくりました。
北原 生産性向上の成功事例を冊子にまとめてもらっています。今年の4月に全会員へ配布しました。機械化やIT化による労働時間の短縮や、勤務シフトの改善といった事例がどんどん出てきています。人手不足の時代に、例えば週休2日はマストで、プラスアルファも必要でしょう。年間の休日100日を確保できないと、若い人はなかなか来てくれない。
また、収益の向上、人材確保だけでなく、生産性向上はサービスの質を高めることにもつながります。労働時間の短縮や作業の効率化で、サービスの質を上げることにつなげていく。海外から「日本旅館協会のサービスは世界一」と評価を得ることで、国が目標としている訪日旅行者数6千万人達成に寄与できると思っています。
―OTAが伸びるなか、客室販売支援事業のシステムを自前で運営していく必要性についはどう考えていますか。
北原 4月に公正取引委員会が大手OTA3社に独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査をしました。一方的な規約の変更や、最低価格保証といった優越的地位を利用した契約の横行を問題視したものです。こうした訴えは、これまで宿泊団体がしてきたことですが、公取は民間同士の契約の問題だと門前払いでした。それが今回は「拘束条件付き取引」という、聞き慣れない言葉で規制の構えを見せました。GAFAへの課税議論や、国境を越えたEC取引の監視といった、世界的流れのなかでの方針転換なんだと思います。
OTAについては、シートリップでの契約のない客室の空売り問題などもありましたし、今後も強い関心を払い、直接協議を続けたいと思います。そうした交渉においても自前のシステムを持っていることは大事だと思います。

以前は門前払いだったOTAに関して、
公取が規制の構えを見せた方針転換を
評価した北原会長
―1期2年の任期の折り返しですが、今年度の抱負をお願いします。
北原 対外的な問題はたくさんあるんですが、組織としては会員数の減少に歯止めがかからないことに危機感を持っています。総会では、政策委員会で議論を重ねてもらった規約改正案を提出する予定です。
改正の柱は、協会の基準をクリアしていれば、簡易宿所営業の施設も受け入れていきましょうというものです。旅館業法の緩和で簡易宿所は増えていますし、なかには高級ゲストハウスといった施設もあり、ぜひ、加入してもらいたい。インバウンドについての有益な情報の交換といった意味でも、双方にメリットを見出せると考えています。
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