上から目線「サービス=無料」
「旅館は好きですし、将来旅館を経営してみたいと思うけど、旅館で働きたくない」。そんな学生が増えています。学生時代に旅館で働き、旅館の魅力や課題を理解している彼らは、旅館ではなく、コンサルや周辺事業に就職していきます。それはなぜか。
ひと言で言えば「あの顧客を相手にすると思えば、BtoCのビジネスに魅力を感じない」。そう言います。もちろん、旅館の方々にしてみれば、常連のお客様はじめ、旅館好きの方々をたくさん顧客に抱えていると思います。
しかし、若者が経験するおかしな客は旅館だけではなく、バイト先にも出没し、上から目線でサービス業をばかにします。その最前線の現場が彼らの意欲を削いでいきます。
全国旅行支援でそうした顧客層が全国で出没したのではないでしょうか。そうした人々のひと言で凹み、彼らはBtoCビジネスから去っていくのです。
ツイッターでも、#実際に言われた理不尽なクレームというハッシュタグが毎日のように拡散されています。
サービス=無料と訳してしまう国です。いつまで経ってもサービス業の労働生産性は上がりません。それどころか、もう誰もサービス業を志望しなくなりつつあります。
もちろん、裏を返せば、そうした人たちも消費者であるわけです。自分は絶対に他ではクレームを言わないのか。自問すべきなのは確かです。
しかし、本紙で「CS宣言」を書き始めて以来25年。確実にクレーマーは増えていると感じます。教育研修の時間も機会も減っているので致し方ない面もありますがエッセンシャルワーカーには誰もなりたがらない国になりつつあります。
皆が「人の上に立って上から目線でものを言える仕事」を目指す国って、最低です…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2022年11月25日号)
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