クマ被害と不安を増幅する私たち
江戸幕府が人間中心主義の儒教を、庶民を統制するためのイデオロギーとして使ったからでしょうか。日本人は自然環境と共生するという意識より、自然は支配するものという意識が強く、虫やクマなど自分たちにとって害のある生き物は即殺りくするというのが当然のようになっています。もちろん、人間に襲いかかり命と引き換えになる恐れがある場合は別ですし、儒教の人倫主義を否定するものでもありません。
しかしクマ被害が増えている背景には何があるのか。Co2排出量世界第5位、面積当たりの排出量は世界一レベルの我が国が地球環境を破壊しているという意識を持ち、その理由を考え、行動できる方がどれだけいるでしょうか。
クマが里に下りてきてしまうのは、エサが不足しているため、人里と森林のバッファーゾーンである里山が消え、森の生き物と人間の境界線が曖昧になったことが主要因です。エサが不足するのは、低木の木の実などを増殖したシカやイノシシが食べてしまうためで、それは明治政府がニホンオオカミを駆除し、全滅させたため天敵がいなくなった背景があります。西洋では家畜を襲うオオオカミは物語でも常に悪者として登場しますが、日本で大神(オオカミ)は狛犬の代わりに神社に祀られるほど、農耕民族の日本人の田畑を害獣から守ってくれる神でもありました。
おそらく近い将来、クマが絶滅危惧種となると、動物写真家の安藤誠さんがおっしゃっていました。
自然と共生するための第一歩として、雪が解けるころ、学生を山菜狩りに連れ出します。里山で山菜やキノコを採り、越冬のために保存食にする知恵もさることながら、里山に分け入ることで、人間のにおいを動物に覚えさせることを実践するためです。
日本でこれから伸びる需要は「不安」です…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2026年1月25日号)
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