同調圧力のない面倒な旅のススメ
年々、若者が旅に出なくなっているのを感じます。なぜかと問うと「お金がない」と言います。
なぜお金がないのか、と聞くので「実質賃金」と「働き方改革」について説明し、皆さん自身がお金がないほうへと社会を誘導しているから仕方ないという話をします。
若者は職業に安定を求めます。言い換えれば働かなくても給与をもらえ、退職もなく、残業のない職場です。それを求める限り、時間でしか労働を計れなくなり、労働時間が減るので賃金は下がります。近年輸入物価高のため実質賃金は下がる一方。スキルもない若者ができることは老後に向けた貯蓄ばかりで、消費が回らず、政府は増税や借金に走ります。これではしかたありません。国民が消費しないのですから。借金は増え国力は下がり、円安で貧しい国にしているのは国民自身です。せめて、なにかスキルを持とう。時間ではなくスキルで賃金をもらえるようになろうと伝えています。
しかし、ここで母親との愛着問題がボディブローのように効いています。非正規雇用が一般化し母親も働くようになった結果、社会では子どもを叱らずに育て、失敗させない育児へとシフトしました。その反動が、失敗は恥と考え、面倒を回避する若者への変化です。旅も「面倒」なもののひとつ。一方でスマホ依存が進み、ソーシャルゲームやマッチングアプリ依存が増え、リアルからの逃避が若者に定着しました。
彼氏・彼女がいないのも恥という同調圧力から「恋活」(結婚を前提としないアプリでの異性友人作り)も一般化し、コロナ後の20代女性の梅毒患者数の伸びは異常です。無知から始まる無防備と無責任の応酬が、ふつうの若者社会に完全に根づいています。恋活と梅毒の増加の相関はかなり強い傾向が見て取れます。恋活ではない「婚活」マチアプは…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2025年11月25日号)
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